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『クレイジージャーニー』密着に「カメラを出すな。撃たれる可能性がある」…ミャンマーの危険すぎる格闘技に復帰、渡慶次幸平「映らなかった本当の姿」
posted2023/11/16 17:01
text by
占部哲也(東京中日スポーツ)Tetsuya Urabe
photograph by
Tetsuya Urabe
頭突き、投げ、何でもありの立ち技格闘技
赤血が入り交じった汗がリング上からカメラに降り注いだ。番組ディレクターの龍辰彦は「ヤバい」と思いながらレンズを何度も拭いた。クーラーが故障した最大都市ヤンゴンの闘技場。リング上の気温は40度近かったという。そこで、繰り広げられた格闘技は常軌を逸していた。
「バキン」「バキン」「バキン」
人生で耳にしたことのない低音が響く。グローブではなく、バンデージだけを巻いた拳、加えて頭突きの衝撃は筋肉を貫き骨まで届く。ひじ、膝、キックや投げも警戒しないといけない。ミャンマーで1000年以上の歴史を持つとされる国技。神聖な面も持つが、世界一危険と呼ばれる何でもありの「狂」も含む。レッドゾーンぎりぎりを攻めるから人は魅了される。格闘技好きで知られるお笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志も「知らなかった」と目を丸くし、驚愕した戦い。一方、狂戦士の渡慶次は3年半ぶりとなるミャンマーのリングで嬉々としていた。
「暑くて……めちゃくちゃきつくて。でも、最高でしたね。水を得た魚。ここが一番好き! ホームに帰ってきた。やっぱり、自分が一番輝ける場所はここだと再確認しましたよ」
世界王者のベルトを狙い、18歳のトゥン・ミン・アウンと3分×5ラウンドを戦い抜いたが、引き分け。終了のゴングが鳴るとミャンマーの新星はマットに倒れ込んだ。
現在も渡航中止勧告が出ている危険地域も
死闘――。スタンドの歓声が天井へと舞い上がった。観客は感動、興奮し、次々と“おひねり”が届いた。ラウェイで骨折は当たり前、失明、時には命をも落とす。多くの選手は20代前半で姿を消し、強者だけが20代後半までリングに立ち続けるという。35歳になった日本人の2018年75kg級王者が、政情不安定で経済の混乱などでも苦しむ民衆を熱狂させた。