格闘技PRESSBACK NUMBER
『クレイジージャーニー』密着に「カメラを出すな。撃たれる可能性がある」…ミャンマーの危険すぎる格闘技に復帰、渡慶次幸平「映らなかった本当の姿」
text by
占部哲也(東京中日スポーツ)Tetsuya Urabe
photograph byTetsuya Urabe
posted2023/11/16 17:01
11月13日放送の『クレイジージャーニー』に登場した「ラウェイ」格闘家の渡慶次幸平。ミャンマー凱旋を本人・関係者の証言で振り返る
ミャンマーでは2021年2月1日、軍がアウン・サン・スー・チー国家顧問を拘束するクーデターが起きた。軍と民主派勢力との間で戦闘が続き、コロナ禍も重なって国内は混乱。現在も外務省が渡航中止勧告を出している危険地域が存在する。
両親にはミャンマーに行くことを伝えられなかった
渡航前、龍とプロデューサーの武藤利治は血の気が引いたという。ビザの手続をしていると両親の氏名、生年月日、住所、連絡先を書き込む欄があった。海外ロケの経験が豊富な2人でも初経験。龍は「これは……もしもの時のためってことか」と思い「両親にはミャンマーに行くことを伝えられなかった」。現地のコーディネーターからは「カメラを無闇に出さないでください。銃と間違えられて撃たれる可能性があるので」と釘を刺された。
だが、ミャンマーの空港に降り立つと印象が変わった。外国人王者の3年半ぶりの帰還。一般人がほほえんで、スマートフォンでの記念撮影を頼んできた。街を歩いても同じ。渡慶次の顔が広く知られていた。日本で言えば、外国人横綱の訪問。好待遇、安全を感じたが、思わぬ“ハプニング”が起きた。試合前に現地テレビ局の番組に出演した時だった。ニックネームがこれまでの「狂戦士」から「岩男」に変わっていたのだ。渡慶次は苦笑して振り返った。
「えっ! オレ岩男なの?って。『The Rock』とかならかっこいいんですけどね(笑)。割れない=諦めないという意味みたいです。ミャンマーには落ちそうで落ちないゴールデンロックという観光名所があるので『ゴールデンロック目指して頑張ります』と答えました。前のように狂戦士、バーサーカー、ベルセルクとか言われるのが好きだったのになぁ~」
王者となって見たミャンマーの衝撃的な光景
「クレイジー(狂)」から「ロック(岩)」へ、まさかの方向転換だった。しかし、2017年のラウェイ初参戦から6年。世界一危険な格闘技を生き抜き、不屈の男として認められた証でもあった。
19歳の時に山本“KID”徳郁のようなスター格闘家を夢見た。3万円を握りしめ、故郷の沖縄から上京するもホームレスに転落。最終的には、財布に60円しか残らなかった。その後、紆余曲折。「ダメ人間」は妻と約束した引退リミットの30歳目前にミャンマーの国技と出会い、救われた。