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[日本一ドキュメント]岡田彰布とタイガース「知略の応酬を制して」
posted2023/11/09 12:00
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
Hideki Sugiyama
仕掛けたのは「静」と見られた岡田だった。エース攻略、代打の先読み、切り札投入、そして、陽の目を見なかった秘策まで――。岡田阪神の神髄に、全7戦密着で迫った。
阪神タイガースにとって「1985」が、ようやく過去になった。
3勝3敗で迎えたオリックスとの日本シリーズ第7戦は9回に入っていた。監督の岡田彰布はベンチで涙を拭うしぐさをみせた。最後を飾ったのは、2アウトから登場した守護神の岩崎優だ。左翼への飛球が、この日、先制3ランを放っていたシェルドン・ノイジーのグラブに収まった。
2023年11月5日、午後9時44分。
38年ぶりの日本一を達成すると、当時、まだ誰も生まれていなかったナインの手で岡田が宙を舞う。万感の思いをかみしめた。
「27歳でね、前回の日本一の時は。長かったですね。選手で日本一を達成して、監督で日本一を達成できて、本当に幸せ。何とか達成できた、アレのアレを」
59年ぶりの関西ダービーは互いの本拠地の最寄り駅を結ぶ路線の名から「阪神なんば線シリーズ」と称された。チームカラーも似ている。リーグ1位のチーム防御率を誇る投手力で守り勝つ野球である。一方の攻撃は対照的だ。固定した打順で臨む岡田に対し、オリックスの監督、中嶋聡は143試合で135通りのオーダーを組んだ。
「静の岡田」と「動の中嶋」の駆け引きに注目が集まり、拮抗した戦いを予想する声が多かった。
第1戦で強烈な先制パンチを浴びせたのは阪神だった。3年連続でパ・リーグ投手4冠の山本由伸の前に、4回まで得点できなかったが、5回に大エースを崩した。