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「箱根駅伝では日本人に負けるとは思わない」“駅伝デビュー”で区間新の衝撃…スーパー1年生・前田和摩は東農大を変えた「上級生が前田のマネを…」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byYuki Suenaga
posted2023/11/08 06:00
全日本大学駅伝は区間3位も歴代の区間記録を上回る区間新記録を叩き出していた前田和摩。本人と東農大の関係者に話を聞いた
「先頭で襷を持ってくることまで考えていましたから。前田ならそれくらいのことをやりかねないので(笑)」
攻めの走りは、大会4連覇を達成した駒澤大の大八木弘明総監督の目にも留まった。手塩にかけて育てている佐藤圭汰には10秒及ばなかったが、底知れぬポテンシャルを感じていた。
他の選手よりも優れている「調整力」
「果敢に突っ込んでいく姿勢がいいね。強くなるためには、あのチャレンジする気持ちが大事。佐藤との差は、トレーニングの差でしょうね。前田くんがもっと質の高い練習を積んでくれば、もう1ランク上がってくる。素晴らしい選手になると思います。そうすれば、いい勝負になる。ライバルが現れたほうが面白い。これからが楽しみ。世界を目指せるルーキーが出てくると、全体のレベルも上がってきますから」
箱根駅伝の予選会から3週間。立川で走ったハーフマラソンの疲労を残す選手もいるなか、前田は万全の状態でスタートラインに立っていた。体の調子を整えるために治療院に足を運び、脚を休めることを最優先したという。小指徹監督は本番にピークを合わせる『調整力』には目を細める。
「自己管理できていますから。毎回、レースでは安定して自分の持っている力を発揮しています。高校時代からそうでした。これは他の選手よりも優れている点でしょうね」
大学の環境に順応するのも早かった。生まれ育った兵庫から上京し、初めての寮生活を送っているが、なじむまでにそれほど時間はかからなかった。競技者として模範的な生活を送る同部屋の原田から多くのことを学び、今は食事から睡眠に至るまで気を使っている。
変わった上級生の雰囲気
「親しみやすく、優しい先輩たちに恵まれた」と本人は口にするが、それだけではない。キャプテンの高槻芳照(4年)は、夏前に思わぬ相乗効果があったことを明かしていた。