箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「箱根駅伝では日本人に負けるとは思わない」“駅伝デビュー”で区間新の衝撃…スーパー1年生・前田和摩は東農大を変えた「上級生が前田のマネを…」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byYuki Suenaga
posted2023/11/08 06:00
全日本大学駅伝は区間3位も歴代の区間記録を上回る区間新記録を叩き出していた前田和摩。本人と東農大の関係者に話を聞いた
「昨年までは先輩から後輩に積極的に話す場面はあまり見なかったのですが、前田が来てから少し変わりました。上級生がフレンドリーになったのかなと。やっぱり、年下でも強い選手とは、みんな話をしたいじゃないですか。参考にできることは参考にしたいので。前田がルーティンにしている練習前の体操をマネする上級生もいます」
やっとできました。駅伝が…
4区で区間5位と好走した並木寧音(4年)も、チームにもたらした前田効果は計り知れないという。14年ぶりの伊勢路も「前田が入ってくれたおかげで出場できた」と感謝しきり。言葉には実感がこもる。関東学生連合の一員として箱根駅伝は走っているものの、東農大で学生三大駅伝に出場するのは4年目で初めて。チームの結果は後半区間で失速して13位に沈んだが、4区まではシード圏内の5位と奮闘した。並木は見慣れた同じジャージを着た仲間たちに囲まれ、しみじみと話していた。
「やっとできました。駅伝が……。東農大の襷は重みが違います」
全日本大学駅伝は14年ほど遠ざかっていた舞台。襷が「松葉緑」から「白に松葉緑の縁取り」に一新した今季、次に挑むは夢の舞台。10年ぶりに挑む箱根路である。古豪復活の原動力となっている“驚きの18歳”は、胸を躍らせていた。前田がイメージするのは『花の2区』。ケニア人留学生をはじめ、各大学のエースたちにも負けるつもりはない。
「単独走をうまくできれば、区間賞も狙えないことはないです。課題は突っ込んだ後、安定して走ること」
留学生とも十分に戦える
小指監督も箱根路の2区にエントリーしてくる強豪ランナーたちと互角以上に戦えると踏んでいる。
「日本人選手に負けるとは思わないですし、留学生とも十分に戦えるはずです。2区でも区間賞を取れると思います」
前田は距離が延びれば、さらに強くなる。起伏のあるコースへの苦手意識もないという。96回大会に東洋大の相澤晃がマークした1時間05分57秒の日本人記録、さらには97回大会で東京国際大のイェゴン・ヴィンセントが樹立した1時間05分49秒の区間記録に迫るかもしれない。想像を超える快走劇への期待が膨らむ。