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「箱根駅伝では日本人に負けるとは思わない」“駅伝デビュー”で区間新の衝撃…スーパー1年生・前田和摩は東農大を変えた「上級生が前田のマネを…」
posted2023/11/08 06:00
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph by
Yuki Suenaga
箱根駅伝予選会で日本人トップを取ったスーパールーキーの実力は、やはり本物だった。東京農業大学の前田和摩が、11月5日の全日本大学駅伝で鮮烈な大学駅伝デビューを飾った。各大学のエース格が集まる伊勢路の2区を志願し、圧巻の6人抜きを披露。昨年、葛西潤(創価大4年)がマークした記録を更新し、区間新記録をマーク。そのタイムを駒澤大の佐藤圭汰と青山学院大の黒田朝日に上回られ、2人に負けた悔しさはのぞかせつつも、結果には納得していた。
「来年に向けて、良い目標ができました。ここから頑張って、次は1位を取れるようにしたいです」
「一人で挽回してやる」とは思わない
むしろ、本人は区間順位よりチーム順位を上げられたことに手応えを得ており、自身初めての大学駅伝を楽しめたという。沿道の大きな歓声を肌で感じながら、名古屋市港区の第1中継所に立っていた。10位で襷を受けると、「できる限り、前まで行こう」と自らに冷静に言い聞かせた。前田は「一人で挽回してやる」とは思わないようにしている。高校から本格的に陸上を始めた元サッカー少年は報徳学園高時代に駅伝で失敗した経験があり、あえて気負わないことを意識。大まかなレースプランだけを頭に描き、勢いよく飛び出した。5km通過地点ですでに3人をかわし、ぐんぐんと突き進む。9km半ばで大学トップクラスのタイムを持つ中央大の中野翔太(4年)を捉えると、10km過ぎには東京国際大のケニア人留学生アモス・ベット(1年)まで抜き去る。最後は力を振り絞って後続を突き放し、順位を4位まで押し上げて3区へ襷をつないだ。
「あの(ベットの)背中が近づいたときには勝ちたいな、と思いました。全日本大学駅伝の関東選考会(予選)では負けていたので、リベンジを果たせて良かったです。(駅伝の6人抜きは)気持ちいいですね。襷をつなぐ駅伝は、やっぱり楽しい。最初に突っ込んで入り、後半は我慢する、イメージ通りの走りができたと思います」
先頭で襷を持ってくることまで考えていました
3区の中継点で東農大の襷を待っていた2年生の原田洋輔は、1年生エースが2区でごぼう抜きしてくることは想定していた。絶対にレースで外さない後輩への信頼は厚い。