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「ゼロからスタート」鍵山優真(20歳)の1年間のブランクからの新たな挑戦…ハイレベルな復帰戦、今季は「ネイサンがたくさんいるという状態」
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2023/11/07 11:05
フランス大会にて2年ぶりにGP大会に復帰した鍵山優真
成長のための“新コーチ”の存在
ジャンプのリハビリだけではなく、今季はさらに表現にもテコ入れをした。振付師ローリー・ニコルのアシスタントをしていたカロリーナ・コストナーが、今年の夏からコーチとしてチームに加わったのだ。本人の希望だけではなく、子供のころから指導をしてきた父、鍵山正和コーチの意思でもあったのだという。
「(2021-2022)オリンピックシーズンの時に、イタリア(GP大会)が終わってから1対1で見てもらう機会があって、信頼関係が出来上がっていた。自分の足りないものを伸ばしていきたいと思って、ジャンプだけではなく表現なども教えてもらいたいなと思ったんです」
もともとスケーティングの美しさに定評があった鍵山だが、それまで自分がしていた表現というものは内側に向いていた気がするのだという。コストナーコーチにはもっと外向きに、ジャッジや観客に向けて表現することを指導された。その成果あってか、フリーの最後のステップシークエンスはこれまで以上の迫力に満ちていた。
「プログラムの一つの見せ場としてあのステップシークエンスがあるので、脚がいくら限界が来ても踏ん張ってやろう、という強い気持ちでのぞんでいます」
「ゼロからスタートする気持ち」
次は大阪で開催されるNHK杯で宇野昌磨と顔を合わせる。そこの結果しだいでGPファイナル進出も可能だが、最大の目標は世界選手権だ。すでに銀メダルを2度手にしている世界選手権だが、今季は全く新しい気持ちで挑む。
「1年間のブランクがあって、今シーズンはゼロからスタートする気持ちでいるので、もっともっと世界のトップを目指していきたいという強い気持ちがあります。今シーズンはまだ焦るべきではないと思っているので、少しずつ自分のできる100%というのをもっと伸ばしていきたいなと思う。GPシリーズを通して成長できる部分も感じられたらいいなと思うし、目指すは世界選手権なのでそこでフルマックスの構成でできたらいいなと思っています」
本格的に復帰した鍵山の、今後の活躍を楽しみに見守りたい。