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MLB日本人初の女性トレーナーがワールドシリーズに! ダイヤモンドバックス谷沢順子を元ヤクルトのマクガフも絶賛「神経系の治療は彼女が一番うまい」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byAyako Oikawa
posted2023/11/06 17:00
ワールドシリーズ進出を果たしたダイヤモンドバックスの快進撃を支えたアスレティックトレーナー兼マニュアルセラピストの谷沢順子さん
「もちろん最初は驚いたよ。でもね、長いこと大リーグでプレーして色々なトレーナーの治療を受けているうちに、体についてたくさん学んだ。背中や肩に痛みが出るのは他の部分がうまく機能していないから、とかね。治療を受けるたびに日本人トレーナーがいかに運動生理学や体についての豊富な知識を持っているか気付かされるよ」
昨年までヤクルトスワローズに所属し、今季からダイヤモンドバックスでプレーするスコット・マクガフ投手もロンゴリアと同意見だ。
「僕は時々、首が攣るんだけど、その痛みがどこから来ているのか、どこを緩め、どこを締めたらいいのか、そういうことも順子は熟知している。神経系を整える治療は彼女が一番うまいと思う」
ほかにも大リーグにスムーズに移行できた理由の一つとして、谷沢さんのケアを挙げる。
「プロ野球と大リーグではボールの大きさが違うから、シーズン初めに少し指に違和感が出たんだ。スプリットを投げる時に指を食い込ませるような感じで投げる影響だけど、順子は指をストレッチしたり、器具を使って治してくれた。日米でストレッチやマッサージも違うんだ。日本ではトレーナーは指や腕のストレッチもしてくれたことを話したら、すぐに対応してくれた。日本で僕が受けてきた治療を理解して、米国の技術も加えてケアしてくれるのもとてもありがたい」
球団もメディカルチームを支援
ダイヤモンドバックスは選手をベストの状態でフィールドに立たせるための投資を惜しまない。それも今季の活躍に繋がっている。
「シーズンオフになると、スタッフが勉強したい分野のメディカルの専門家を呼んでセミナーをしてくれたり、学びたい分野がある場合、球団に申請するとその授業料を払ってくれる制度もあります」
ちなみに谷沢さんは現在、オステオパシーを勉強中で「ちょっとオタクな分野に入ってきていますが、毎年、新しい治療、技術を修得できるように常に勉強しています」と話すように、今、学んでいることもきっと選手の力になるのだろう。
ダイヤモンドバックスでの仕事は今季で6年目になるが、目標だった大リーグのアスレチックトレーナーになるまで15年の月日がかかっている。2003年にパドレスでインターンをしたが、その後、機会に恵まれなかった。しかしその間、目標を見失わず、陸上を中心に様々なスポーツの現場で研鑽を積んできた。
キャプテンのような存在のロンゴリアはその苦労を理解し、こう話す。
「僕が大リーグに入ったばかりの時、球団職員には女性がいたけれど、チームにはほとんどいなかった。今はトレーナー、栄養士など多くの女性が活躍している。時代が変わってきたように感じる。順子はそういうスタッフの中で技術面はもちろん、人としても群を抜いている。プロ野球選手だった父親を持っていることも関係していると思うけれど、プロの世界をよく理解し、高い意識を持って選手やスタッフに接している。彼女はチームに欠かせない存在だ」
チャンスをくれたチームへの恩返しは、選手が力を発揮できるようにサポートすることだ。目標の世界一に向けて、谷沢さんの挑戦も続く。