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プロ野球PRESSBACK NUMBER
日本ハムがドラフト6位指名もJR東日本へ…“最後の指名拒否”山口裕次郎は駅員になった 本人が明かす、その後の野球人生「どれが正解か分からなくなって…」
text by
内田勝治Katsuharu Uchida
photograph byYu Saito
posted2023/11/04 11:04
シフトで決められた泊まり勤務の後、多忙な中、取材に応じてくれた山口裕次郎さん。今年から都内で駅員として勤務
「成輝が引退した時に連絡しました。偶然なのか分からないですけど、『一緒の時期やな』みたいな感じで話しました。お互いがケガとか、悩んでいるところもあったと思うんですけど、最後は両方とも『お疲れ』みたいな感じで終わりましたね」
悔しい気持ちはありましたけど…
まだ24歳と若かったが、野球の道をきっぱりとあきらめ、JR東日本の社業に入ることを選択した。
「他で野球をやろうという思いもその時はなくて、自分の実力不足で終わるなら、JR東日本で終わろうと。自ら引退はしていないので、悔しい気持ちはありましたけど、未練はありませんでした」
11、12月と営業のトレーニングや機械の取り扱いなどの研修をみっちり行い、年明けの2023年1月から御茶ノ水営業統括センターに配属。日勤や、宿泊を伴う夜勤で御茶ノ水駅の改札業務に入り、乗客の対応に追われる多忙な毎日を過ごしている。
野球で学んだことを仕事に生かせている
「それまでずっと野球をやってきてアルバイトもしたことがなかったので、最初はどうなるのかと思いました。でもやっていくうちに野球で学んだことを生かせたというか、駅も1人だけじゃなく、全員で連絡を取り合って緊急事態などにも対応していく。野球をやっていたからこそ、いい意味で違和感なく入っていけました」
野球から離れたからこそ、懐かしい感覚を取り戻すこともできた。たまの休日。知人に誘われた草野球で登板する機会に恵まれた。「小学生以来」という軟式ボールでの投球。もうフォームも、腕の位置も気にすることはない。本能のままに、思い切り腕を振った。「久しぶりにグラウンドに行ってグラブをつけて投げたらやっぱり楽しいですよね。でも、軟球を投げたら肩が痛いです(笑)」。投手であるがゆえ、現役の頃は控えめだった上半身の筋力トレーニングも、今では気兼ねなくできるようになった。
同じ境遇の選手に何と言葉をかける?
仕事も軌道に乗り、野球とはまた違った充実の日々を送る。あの時、プロからの指名を断ったことに「後悔はないです」と言い切る。もし自分と同じような境遇に置かれた選手がいたら、迷わずにこう声をかける。