メジャーリーグPRESSBACK NUMBER
「WBCがなかったら…」ヌートバーがいま明かす“夢の出会い” 藤浪晋太郎、千賀滉大、まさかイチローにも…「母にユニフォームを奪われて」
posted2023/10/22 17:00
text by
ブラッド・レフトンBrad Lefton
photograph by
Naoya Sanuki
お互いに意識していた。
9月12日、ボルチモア、オリオールパークでのカージナルスの打撃練習中にオリオールズの藤浪晋太郎が黒いTシャツ姿で現れ、ネットの前でファンにサインをし始めた。ケージ周辺で自分の番を待っているカージナルスのラーズ・ヌートバーは藤浪の動きをチェックしている。藤浪の目線も何度かケージの方に移っていた。
その流れでタイミングが合った瞬間に二人が初顔合わせとなった。笑顔で握手を交わし、数分間楽しそうに談笑していた。ヌートバーにとって、今シーズンの大きな刺激の一つだったという。
「WBCの経験がなかったら間違いなく藤浪さんや千賀(滉大)さんに自己紹介することはなかった。もちろん会いたい気持ちはすごくあったけど、自分から挨拶をする勇気はなかったかなと。だって、“ラーズ・ヌートバーって誰? 変な人じゃないか?”と思われるでしょう」
もう、その心配はない。
侍ジャパン初となる海外生まれの日系人選手であるヌートバーは、WBC日本代表に選出されたことによって得たものが大きかった。幼い頃から心の中にある“日系人であること”を素直に表せるようになったのだ。
「少年時代から日本人選手に対して関心があった。ただ家族以外には誰も僕が日本人の血が流れていることを知らなかったと思う。でもWBCのおかげで藤浪さんや千賀さんなど、日本人メジャーリーガーが、僕のことを少しでも知ってくれるようになったんだ。こちらから自己紹介しに行っても、“変な人”ではなく、温かく歓迎してくれた。それはすごく嬉しいことだし、とてもとても感謝しています」
「夢のような出会いでした。まさかイチローさんに…」
実は、初めて自らアプローチをした人物は現役の選手ではなく、あるレジェンドだった。