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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
車掌、作業療法士に研修医も!? “平均年齢28.8歳”放送大学関西チームが箱根駅伝予選会参加のナゼ「仕事と家庭と競技と学業と…」おっさん大学生の青春
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byShunsaku Sakai
posted2023/10/20 17:15
平均年齢28.8歳の「おっさん大学生ランナー」たちが集った放送大学関西チーム。彼らが予選会に挑んだ経緯とは…?
レース前、彼らは青色や緑色の常連校のジャージを見て気圧されていたが、走りだすと声援が力に変わり、レースに向き合えた。21.0975kmは、いかにも長くて苦しい。立ち止まりたくもなる。だが、キツくなった時ほど、見知らぬ人からの声援に後押しされるから不思議だった。
ゴールが近づくにつれて1つのデッドラインが迫っていた。
「1時間24分00秒」
箱根駅伝予選会の打ち切り時間である。レースは各校上位10人の合計タイムで競う。1時間20分を過ぎても、まだ2人足りなかった。制限時間内にゴールしなければチーム記録として認められないのだ。走り終えた選手たちはやきもきしながら待った。
やがて1人が姿を見せた。その1分後、もう1人もやってきた。運命のリミットまで残り1分41秒で10人がゴール。初めて放送大関西が箱根駅伝に足跡を残した瞬間だった。
チームは総合55位。「箱根駅伝」には、かすりもしなかった。それでも、仲間たちは握手で称えあった。村上は感慨を込めて言う。
「1万m34分は、箱根駅伝を目指す大学からすれば、ジョギングみたいなものかもしれません。でも、今回はチームメイト全員が完走することができて、記録を残すことができて、率直にすごくホッとしています」
「僕らを見て、新しい何かに挑戦する人たちが増えたら」
101回目の箱根駅伝に彼らはいない。24年正月の100回大会を終えると、再び参加資格は関東学連所属の大学だけに戻るからだ。村上はある思いを抱く。
「過去に誰かが箱根に出ようと思いついたとは思うのですが、今まで、誰一人として行動に移すことはありませんでした。僕個人としては、すごくやりがいがある目標でした。僕らの活動を見て、新しい何かに挑戦する人たちが増えたらいいなと思っています」
彼らは「箱根駅伝」に引き寄せられるようにスタートラインに立った。その先には、走り続けてきた者だけに見える道があった。あの日から4日たった夜、村上は再びランニングシューズの紐を結び、街へと駆けだしていった。
《後編へ続く》