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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
車掌、作業療法士に研修医も!? “平均年齢28.8歳”放送大学関西チームが箱根駅伝予選会参加のナゼ「仕事と家庭と競技と学業と…」おっさん大学生の青春
posted2023/10/20 17:15
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph by
Shunsaku Sakai
さて、そんなお正月の”晴れ舞台”を目指す若者たちの中に、ひと際異彩を放つチームがひとつ――。それが「平均年齢28.8歳」の放送大学関西チームだ。なぜ彼らは、遠く関西からこの予選会に挑んだのだろうか? そのメンバーたちには“普通の大学生”とはすこし異なる紆余曲折があった。(全2回の前編/後編に続く)
タイムよりも、大切なものがある。
それを体現したのは、箱根駅伝予選会に初出場した放送大学関西のランナーたちだった。トップの選手がフィニッシュしてから18分後、主将の村上将悟がやってきた。顔をしかめながら、腕を振る。最後は左手を天に突き上げてゴールした。
「僕自身は、この大会のスタートラインに立つことが最大の目標でした。昨日、仕事が終わってから、夜9時ごろに東京に着いて、なんとか無事に走れました」
空色のランニングシャツが秋晴れに映える。箱根路を目指し、仲間たちと東京・立川の市街地を駆け抜けた。
なぜ箱根の予選会に放送大学が…?
「えっ? 放送大も出てるんだ……」
予選会に出場する彼らを知り、多くの人が抱く思いだろう。放送大はBSテレビ放送などで授業を受ける通信制大学で、大卒資格の「学士」の学位を取得できる。とはいえ、大学陸上界ではほぼ無名だっただけに、この秋、エントリーが公表されると、周りはざわついた。
「おっさん大学生ランナー」「文武労働」「やりたい放大」……。
とにかく異彩を放つ集団である。
彼らが打ち出すスローガンは伝統ある箱根駅伝の“威厳”と対極にある。正月の晴れ舞台への当落線上にいる常連校の張りつめた雰囲気とは対照的で、どこか肩の力が抜けていた。だが、スタートラインを目指す道のりは真剣そのものだった。