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箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
車掌、作業療法士に研修医も!? “平均年齢28.8歳”放送大学関西チームが箱根駅伝予選会参加のナゼ「仕事と家庭と競技と学業と…」おっさん大学生の青春
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byShunsaku Sakai
posted2023/10/20 17:15
平均年齢28.8歳の「おっさん大学生ランナー」たちが集った放送大学関西チーム。彼らが予選会に挑んだ経緯とは…?
昨年6月、関東学連の大会である箱根駅伝が節目の第100回に限って、全国の大学に出場の門戸を開くと、放送大関西のメンバーは迷わずに出場を決めた。
だが、スタートラインに立つまではいくつもの障壁があった。
予選会出場に立ちはだかった”2つの壁”
まずは参加資格の問題である。箱根駅伝予選会は10人以上のエントリー選手全員が「1万mで34分00秒以内の公認記録」を持つことが条件になっている。放送大関西では最後のひとりがタイムを切れば、人数がそろう状況だったが、その最後が大変だった。もちろん、危機感もあった。
村上は「最初はまったくタイムが届かない状況でした」と振り返る。「一発勝負だった」という6月の記録会で仲間がペースメーカーを務めてチームで協力し、何とかクリアすることができた。そうして、晴れて箱根予選会予選会の参加資格を得た。
ただ、難題はもうひとつあった。世間の目である。
出場の意思が明るみに出れば、ルール変更や反対意見が出るかもしれない。だから、チーム内で申し合わせていた。「絶対に誰にも言うな」。異例の箝口令は、全員がスタートラインに立つためだった。通信制大学の特殊性ゆえに、予期しない反響を避けるため、慎重に動いたのだという。
秋晴れの立川。レース直前、主将の村上は選手たちにひとつだけ伝えた。
「スタートラインに立てた。あとは、みんな“やりたい放大”走ってくれ」
予選会ならではの戦法である集団走を行わず、それぞれのペースで走り出した。陸上自衛隊駐屯地を3周し、街へと飛び出していく。そこには見たことがない光景が広がっていた。沿道には箱根駅伝常連校ののぼりがあちこちに立っていた。もう自校の選手は走りすぎていったのに、まだ多くの人が残っていた。
「放送大学、頑張れ!」