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外野手はドラフトで「あと回し」にされがちだが?…西川遥輝(日本ハム→楽天)に重なる社会人の逸材は競合必至 2023年ドラフト目玉候補《外野手ベスト3》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/23 11:03
ドラフト目玉ベスト3 外野手編【1】ENEOS・度会隆輝(183cm83kg・右投左打)
外野手編【3】日本文理大・東門寿哉(178cm78kg・右投左打)
2010年の「全日本大学野球選手権」、当時、八戸大の秋山翔吾外野手(現・広島)が、東洋大の左腕・乾真大投手(元日本ハムほか)から神宮球場の外野スタンドに打ち込んだホームランは、おそらく生涯忘れないだろう。
左腕のシュート回転で内角に入ってくる難しいボールを、とっさに上体をわずかに後ろに反らすようにして、スイングする空間を作り、見事に振り抜いた打球は、右中間の深いところへほぼライナーで突き刺さった。芸術的な打ち方のホームラン。この打者がプロで活躍できなくて、いったい誰が活躍できるのか。そんな確信を持てた。
今年、同じ大学選手権で、ほとんど同じようなバッティングで先頭打者ホームランを放ってみせたのが、東門寿哉中堅手(日本文理大・178cm78kg・右投左打・日本文理大附高)というリードオフマンだ。名字は「あがりじょう」と読む。
学生球児にとっては「甲子園」のような大舞台の初回。それも先頭打者としてのファーストスイング。秋山翔吾はシュートだったが、東門寿哉はカーブだ。やはり、内角の難しいゾーンに入ってきたボールをしなやかなフルスイングで、東京ドームのライトスタンド中段に、秋山選手の時と同じようなライナーでぶち込んだ。
背中がスッと立った自然体の構えで、その横顔まで秋山選手の学生時代によく似ている。
下級生の頃より下半身が太くなって、均整抜群の体躯。その全身が躍動したのが第3打席。1死二塁での三塁前セーフティバントで、一塁駆け抜けのタイムが3秒55と出て驚いた。左打者なら4秒切ると快足といわれるが、走り打ちのセーフティでもこのタイムは速い。
裸足で走っているような軽快なフットワークは、左中間、右中間の守備範囲の広さにも発揮されて、打席で追い込まれるとオープンスタンスにして体をちょい沈め、今度はファールを打ちにいく。中村壽博監督仕込みの「嫌がられる野球」をしっかり実践している。
今年のドラフト、いわゆる「打てて守れて走れる外野手」という存在が高校、大学、社会人すべてのカテゴリーで非常に少ない。
「外野手」が補強ポイントに挙がっている球団からは、意外と早いタイミングで名前を呼ばれてもおかしくない逸材と見ている。
とにかく、身体能力は飛び抜けている。本人の強烈な意欲となりふり構わぬ努力次第で、プロでレギュラーも望める潜在能力の持ち主が、「九州・大分」でひっそりとドラフトを待つ。
<投手編、捕手編、内野手編から続く>