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「タケはゲームで使ってるよ」少年と敵地大ブーイングの愛憎…月間MVP久保建英22歳が“アトレティコサポに認められた勲章”を撮った
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2023/10/12 17:00
アトレティコ戦での久保建英。9月の月間MVPに輝くなどその力はスペインに轟いている
前半序盤の絶好のカウンターの機会、スビメンディがパスを選んだのは久保と共に飛び出したオヤルサバルだった。攻撃の色を強めた後半にも、久保が飛び出してブライス・メンデスにパスを要求するもボールは逆サイドへ展開された。
久保とブライスの意思の疎通はできていた、ただ分厚いアトレティコの壁がボールを逆サイドへ誘導するかのようにパスコース自体を消し去っていた。プレー直後にブライスから久保へ、「出せなかった」というような言葉がゼスチャーと共に投げかけられていた。久保へのフィードが届かず、直前にカットされるシーンも何度もあった。
一方、アトレティコの先制点のシーンでは、〈久保シフト〉とでも言いたくなるほどアトレティコの比重が久保サイドに偏ったことで、逆にソシエダ側からの守備にズレが生じていた。
暑さの影響もあっただろうか、中盤でボールを保持するコケへのプレッシャーが全くかからない状況に陥っていた。それに加えて、前線を自由に動くグリーズマンが絶妙なポジションでソシエダ右SBを喰い付かせると、そのスペースへ、5バック大外のリノが駆け上がった。そこにピンポイントでコケがフィードを通し、易々と先制ゴールを奪取した。
スタンド近くで喜びを爆発させる輪とは別に、ピッチ中央には、その見事なパスを感嘆の表情で祝う様子があった。
GKへのプレスは久保が先に触ったように見えたが
その後も何度か久保がライン際で見つめるシメオネを慌てさせるようなシーンもあったが、アトレティコ守備陣に封殺されてしまった。
ただそれだけで諦める訳ではなかった。前半終了間際には、久保の鋭いプレスに慌てたGKヤン・オブラクがボール処理に手間取る隙に詰め寄り、あわやというシーンを作った。久保の足が先にボールに触れているようにも見えるが……。
昨シーズンも何度も作ったシーンで、久保のプレスはGKへの脅威となっている。またオヤルサバルへのピンポイントクロスも得点を匂わすチャンスだった。