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「タケはゲームで使ってるよ」少年と敵地大ブーイングの愛憎…月間MVP久保建英22歳が“アトレティコサポに認められた勲章”を撮った
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2023/10/12 17:00
アトレティコ戦での久保建英。9月の月間MVPに輝くなどその力はスペインに轟いている
「じゃあ、なんで?!」と当然の疑問をぶつけてみると、「上手いからね」と。
そんなこともあるんだななんて思いつつ、ちょっと疑念の目を送ると、「ゲームの中で使ってて、お気に入りなんだよ」とちょっと恥ずかしそうに教えてくれた。
あ、なるほどな、そんな応援の仕方も今どきだな! なんて、世代の違いからか、彼の口にしたサッカーゲームの名は耳にしたことがあるような、ないようなものだったけど。
たしかに、大学生時代には『ウイニングイレブン』で世界中のチームからお気に入りを見つけて、オールスターチームを作って徹夜をしていた。その中に日本人選手を選ぶことはなかったけど、自分のチームに日本人を獲得して遊んでいるスペインの少年がいるだなんて、ちょっと想像してもいなかった未来感である。
いつもの“水かけ”後、監督との打ち合わせが
赤く染まるこのスタジアムの熱気は、撮り応えがある。
マフラーを掲げ熱狂的な雄叫びをあげるサポーターの前に、両チームイレブンが入場してくる。
先発に名を連ねる久保は、通常チームフォト撮影の後、身体に水を撒く儀式を終えると、自身のポジションに向かう。
ただこの日は、一度ピッチに足を向けた後、ベンチ前に戻ると、「mister」と監督を呼び寄せ話し合う姿があった。その仕草からは、アトレティコの陣形から何かを察知し、ギリギリの打ち合わせを行っているようだった。
序盤、ソシエダは前線から猛プレスをかけている。その勢いはキックオフ早々、相手のオウンゴールを誘発したが、わずかにオフサイドの判定がなされた。
シメオネの「リーガはインテンシティが低い」との発言へのアンサーだったかのような激しいプレスに、アトレティコが慌てるような立ち上がりだった。ただ、グリーズマン、デパウル、コケを中心に、徐々にポゼッションを高め、ソシエダ陣内でゲームを進め始める。
徹底的な〈久保シフト〉から生まれたズレとは
久保には常に2人のマークが立ち塞がり、3人目も常に監視体制につかれると、月間MVPを獲得したプレーは影を潜めた。それ以上に久保を苛立たせたのは、ボールに関与する機会自体がなかなかやってこないことだった。