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「引退も考えました」リーチ マイケルが書いたジョセフHCへの“あるメール”…「奇跡」と表現した復活の裏側「立ち上がって、立ち上がる」
posted2023/10/08 11:01
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
Kiichi Matsumoto
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タックルして、起き上がって、走って、またタックルする──。
4度目のW杯出場を、リーチ マイケルは「奇跡」と言った。
「ここまで来られたのは、自分のなかでは奇跡。色々なケガがあって地獄まで落ちて、頑張ってここまで来られたのは自信になっている」
ジョセフHCに送ろうとした“あるメール”
2019年のW杯後、リーチは両足の股関節などの手術に踏み切った。20年1月開幕のトップリーグが新型コロナウイルスの感染拡大で中止され、思いがけず訪れた空白期間を身体のメンテナンスに充てたのだった。
ところが、パフォーマンスは上向かないのである。
「手術をしてからなかなか調子が上がらず、日本代表でも東芝でもプレーが良くなくて、膝や股関節がリハビリしても治らなくて。引退を考えました」
日本代表の活動後のフィードバックでも、厳しい評価を下されていた。足りない、少ない、といった単語が並ぶ。
日本代表のジェイミー・ジョセフHC宛てに、メールを書いたこともある。いまの自分が代表でプレーするのは厳しい、選ばないでください、といった主旨の文章をまとめた。しかし、その場では送信せずに保存した。
「メールをいつ送るのかを考えたときに、自分から代表を辞めるんじゃなくて、監督が切る形のほうがいいだろうと思ったんです。それと、引退を考えたときに、何を残すのか、どんな形で引退するのかが大事だと思って、一番いい状態で引退したいと。トップレベルで戦う実力がなくなって引退するより、まだできる状態で引退したいと思った。そのために気持ちを切り替えて、もう一回エンジンをかけ直しました」
所属する東芝ブレイブルーパス東京のFWコーチを務めるサム・ワードに、ストレートな思いをぶつけた。それまで誰にも明かさなかった苦しみを、初めて他人に打ち明けた。それぐらい必死だった。
「サムに言ったのは、周りの期待度が高くて応えられないから、それがけっこうストレスというか大変だと。頼られるような存在じゃなくなってきたとサムに言って、そこからどうやってそのストレスを減らすか考えて、ある選手の名前が出てきたんです」