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「天下無双のヒョードルが負けるのか?」衝撃バックドロップでカメラマンもパニック…19年前、PRIDEに闘いの神が降りた“伝説の日” 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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posted2023/10/06 17:26

「天下無双のヒョードルが負けるのか?」衝撃バックドロップでカメラマンもパニック…19年前、PRIDEに闘いの神が降りた“伝説の日”<Number Web> photograph by Susumu Nagao

ケビン・ランデルマンがエメリヤーエンコ・ヒョードルに放った「伝説のバックドロップ」の決定的瞬間

ノゲイラの秘技「スピニングチョーク」が炸裂

 セミファイナルには、ヘビー級グランプリの2回戦としてアントニオ・ホドリゴ・ノゲイラとヒース・ヒーリングの再戦がマッチアップされた。両者は3年前の2001年に、PRIDE初代ヘビー級王者決定戦で対戦。ノゲイラが得意の関節技で何度も追い詰めたが、ギブアップは奪えずに判定勝利でベルトを巻いた。皮肉にもこの試合で評価を上げたのは、“柔術マジシャン”に極めさせなかったヒーリングのほうだった。

 頂点に立ったノゲイラは一本勝ちを続けていたが、2003年3月、エメリヤーエンコ・ヒョードルに完敗を喫してベルトを奪われてしまう。その後、ヒョードルの負傷欠場を受けてミルコ・クロコップとヘビー級暫定王座決定戦を行い、劇的な逆転勝利でファンを熱狂させた。

 だが、ノゲイラが求めていたものはベルトではなく、ヒョードルとの再戦だった。「千の技を持つ男」と称されたノゲイラだが、ヒョードルにリベンジするための新しい必殺技を必要としていた。それこそが、グランプリ開幕戦で横井宏考を相手に初披露したスピニングチョークだった。

 スピニングチョークとは、がぶった状態から相手の首と片腕を自身の両腕で巻き込み、回転しながら頸動脈を絞める技で、アナコンダチョークとも呼ばれている。原理としては「腕で絞める三角」といえるもので、いちどセットされると逃げるのは容易ではない。当時はまだこの技を知るものがほとんどおらず、ノゲイラがPRIDEで使用したことで大きな注目を集めた。

 ノゲイラはヒーリングに対してもスピニングチョークを繰り出し、2試合続けて同じ技で勝利した。必殺技のレパートリーが増えた“柔術マジシャン”だったが、試合後の喜びはいつもよりも少なめだった。その表情には「自分はこんなところで負ける訳にはいかない。目指すのはヒョードルの首だけだ」という強い意志がみなぎっていた。

【次ページ】 世界最強の男をぶん投げた「伝説のバックドロップ」

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