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“ロシア軍最強の男”ハリトーノフがシュルトの顔面を血まみれに…「殴るというよりも破壊」カメラマンが震えた“最も凄惨な試合”の記憶 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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photograph bySusumu Nagao

posted2023/10/06 17:25

“ロシア軍最強の男”ハリトーノフがシュルトの顔面を血まみれに…「殴るというよりも破壊」カメラマンが震えた“最も凄惨な試合”の記憶<Number Web> photograph by Susumu Nagao

冷酷なマウントパンチでセーム・シュルトを追いつめるセルゲイ・ハリトーノフ。あまりの凄惨さに、客席からは悲鳴もあがった

『PRIDE GRANDPRIX 2004 2nd ROUND』と銘打たれた6月の同大会はPRIDEオールスターともいえる豪華なメンバーが出場し、4万人を超える大観衆が男たちの戦いに熱狂した。いま思い返しても、「神興行」と言いたくなるイベントだった。

 第1試合から、さっそく日本人エースの桜庭和志が登場。前年にKO負けしたニーノ・シェンブリをスタンドの打撃で圧倒した。見事リベンジを果たした桜庭の勝利で、場内は早くも興奮状態だ。

一撃で意識を刈り取った衝撃的なパワーボム

 第2試合はクイントン・“ランペイジ”・ジャクソンvs.ヒカルド・アローナ。勝者がヴァンダレイ・シウバの保持するミドル級のベルトに挑戦するという、彼らにとって絶対に負けられない一戦だった。

 序盤から柔術の猛者であるアローナが、得意のグラウンドで下になりながらも関節技を狙い、的確な打撃を当てていく。ストライカーのジャクソンの強みを封じたことで試合の主導権は完全にアローナが握り、1ラウンド中盤には「どのように仕留めるのか」に焦点が絞られたようにも思えた。

 私は下からの腕十字か三角絞めがフィニッシュになると予想して、その動きに照準を合わせる。残り時間が3分を切ったころ、アローナが仕掛けた。下からジャクソンの左腕を抱え、脚を「くの字」に曲げて相手の首に回す。三角絞めがセットされる寸前だった。

 しかしその刹那、ジャクソンが怪力でアローナの身体を持ち上げ、2メートルをゆうに超える高さからパワーボムで叩きつけた。轟音とともにリングマットが波打ち、後頭部から落とされたアローナは失神(落下時の偶発的なヘッドバットが決め手という見方もある)。PRIDEの歴史に残る衝撃的なKOシーンとして、いまでも鮮明に記憶しているファンも多いだろう。

 そして第3試合が、冒頭に紹介したハリトーノフvs.シュルトである。1980年生まれのハリトーノフはボクシングとコンバットサンボがバックボーンの選手で、士官学校在学中にMMAの練習をスタート。卒業後はロシア軍に所属しながら、エメリヤーエンコ・ヒョードルのスパーリングパートナーを務め、2003年にPRIDEデビューを果たした。30代半ばで軍は退役したが、いまも選手としては現役だ。

【次ページ】 「こいつの戦い方は人を殺しそうだな」

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