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甲子園の風BACK NUMBER
松井秀喜“5打席連続敬遠”の夏から31年…「おとなのエゴ」と断じられた明徳義塾・馬淵史郎監督が語っていたホンネ「あそこまで書くなら…」
text by
安藤嘉浩Yoshihiro Ando
photograph byJIJI PRESS
posted2023/10/04 17:01
松井秀喜(星稜)への5打席連続敬遠で猛バッシングを浴びた明徳義塾の馬淵史郎監督。「松井君と勝負できるピッチャーがおらんかった」と当時を振り返る
「高校野球の魅力って、弱い学校が知恵を絞って力を合わせたら、強豪校とも互角に戦えるところでしょ。(星稜戦は)そのお手本のような試合やったんだけどね」
そう口惜しがったこともあった。
「今でも同じ作戦を?」馬淵監督の答えは…
あの夏から20年以上がたったころの取材だった。その間、2002年夏には全国制覇を果たすなど、馬淵監督や学校が置かれた状況も、当時とはずいぶん変わった。
思い切って、質問してみた。「今でも同じ作戦をとりますか?」と。
「今なら、やらんな。同じ選手、同じ状況でもね。もっと別の方法を考える」
馬淵監督は、ぽつり、ぽつりと言葉をつないだ。
「あれだけ騒ぎになって、学校にも迷惑をかけた。何より選手たちにいやな思いをさせてしまった。松井君も含めた星稜の子たちにもね」
松井さんは5敬遠について、「むしろ感謝していますよ。あれで、有名にしてもらったんですから」と語っている。
「5敬遠にふさわしいバッターにならなければいけないというモチベーションにもなりました」
そんな彼の言葉を伝えると、「うれしいね。松井君が成功してくれてよかった。正直、ホッとしてます」としんみりした。
「ありがとう、と伝えたいね。体もでかいが、人間的にも大きい男やね」
<後編へ続く>