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「始まってすぐ、たぶん軟骨が折れて」具智元が涙に暮れた日…救いとなった一言「任せろ、俺たちがベンチにいる」<2019年負傷退場からの復活劇> 

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藤島大

藤島大Dai Fujishima

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/09/30 11:01

「始まってすぐ、たぶん軟骨が折れて」具智元が涙に暮れた日…救いとなった一言「任せろ、俺たちがベンチにいる」<2019年負傷退場からの復活劇><Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

今大会、イングランド戦では負傷退場もサモア戦で復活出場を果たした具智元。じつは2019年W杯でも負傷退場からの復活劇を見せていた

「いろいろなスクラムを経験してみたい」

「長谷川慎さんは本当の恩人です」

 2016年度、拓殖大学4年でスーパーラグビーのサンウルブズに呼ばれた。そこでスクラム指導のエキスパートと出会う。

 大学の試合では「スクラムを組んだ後に窮屈と思ったら、自分で勝手に下がって、せぇーの、で押せてしまう」。長谷川流、ジャパンの方法は「こちらが固まって相手を窮屈にさせる」。正反対だ。

「なかなか覚えられなくて」

 翌2017年にふくらはぎを負傷。「4カ月、スクラムを組めませんでした」。これも禍を転じて……というやつなのか。復帰すると「クセが抜けていた」。以後、8人でひとつを実践、晴れの場で腕を突き上げた。

 12月10日、ホンダヒートに合流、ここでのスクラムのメソッドは代表とは異なる。

「引き出しを増やしていきたいので楽しみです」。肋軟骨も順調に快復。トップリーグ開幕戦には「選ばれたら出場できます」。

 同13日には日本国籍取得が報じられた。

「まわりの人のサポートや応援が本当にありがたくて、大学を卒業したころから、日本の国籍でW杯に出場したいと意識するようになりました」。父も理解してくれた。

 照れて細くなる目、その視線の先で広い世界がおいでおいでをする。

「いろいろなスクラムを経験してみたい」

 押す。無慈悲に押す。温和な青年による破壊の準備はできている。

具智元Koo Ji Won

1994年7月20日、韓国・ソウル生まれ。小学校卒業後、NZに留学。大分・日本文理大附属高から拓殖大に進学し、2016年にサンウルブズのメンバーに。2017年にホンダ加入。同年11月に代表デビュー。2019年W杯出場。2019年12月、日本国籍取得。現在はコベルコ神戸スティーラーズに所属。183cm、122kg

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