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「ビール1杯960円、高級ホテルは1泊4万7000円~なので民泊」在ブラジル日本人の“格安ラグビーW杯”観戦記「日本戦はリセールでゲット!」
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byPauline Ballet - World Rugby/Getty Images
posted2023/09/28 17:02
フランスvsナミビア戦前のファンたち。とにかく楽しそう
まず、選手の体格が全く違う。ラグビー選手は、フットボール選手より二回りも三回りも大きく、逞しい。
そしてフィジカルコンタクトに異常に強い。身長2m前後、体重100㎏を超えるような大男たちが全力でぶつかり合うわけで、フットボールなら一発退場となるに違いないプレーのオンパレードだが、ファウルですらない。しかも、誰も痛がる素振りすら見せず、すぐに立ち上がってプレーを続ける。試合中、フットボールなら審判の判定に対して片方、時には両チームの選手がクレームを付ける。しかし、ラグビーでは審判が格段に敬意を払われており、判定に文句を言うことは少ない。
試合後の選手とサポーターの反応にも驚くばかりだ。フットボールであれば、勝ったチームの選手は自分たちだけで喜び、負けたチームの選手はそそくさとピッチを立ち去るケースが見受けられる。しかし、ラグビーでは勝者が敗者を労わる姿が目につく。
国際試合では、ロッカールームへ続く通路の前で、まず勝ったチームの選手が両側に並んで花道を作り、負けたチームの選手たちを拍手で迎える。続いて、負けたチームの選手たちがやはり花道を作り、勝ったチームの選手を迎えるのが慣例となっているようだ。
さらに、勝ったチームの選手も負けたチームの選手も、場内を一周してサポーター、ファンの声援に感謝する。観客の方も、勝者、敗者の隔てなくすべての選手に大きな拍手を送り、健闘を称える――。フットボールではお目にかかれないことばかりだ。
フットボールと比べてラグビーでは勝利にこだわりすぎず、スポーツマンシップを貴ぶ度合いが高い、ということなのだろう。
返す言葉のない“フットボール観”
それでは、ラグビーファンはフットボールをどう思っているのか――。スタジアムとその周辺で出会った各国のファンに聞いてみた。
「フットボール? ちょっと体がぶつかっただけで、大袈裟に痛がる」
「クラブが、まるで株や仮想通貨のように選手を売買する。ビジネス優先で、良い値が付けばチームのエースだろうが将来有望な若手だろうが誰でも売り払い、『儲かった、儲かった』と喜んでいる。何代にも渡ってクラブを愛するサポーターのことなど、これっぽっちも考えていない」
「大多数の選手が考えているのは、金を儲けることだけ。金のためなら、少し前なら中国やロシア、今なら中東と、どこへでも行く。フットボールへの愛、クラブへの愛など、ひとかけらもない」
散々な言われようだった。しかし、返す言葉がない。大体、その通りだからだ。