濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
刑務所を出た母親は「別人でした」 覚せい剤で逮捕、そして再会…どん底だった外枦保尋斗(23歳)が“1分間格闘技”BreakingDownで叶えた夢
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2023/09/16 11:04
「BreakingDown9」にて勝利を収めた外枦保尋斗。出所した母との現在について聞いた
復活のKO勝利…届いた母からのLINE
そうした中で迎えた4戦目は8月26日の『BreakingDown9』。対戦相手のハイメは前日会見で睨み合いを仕掛けてきた。
「そこで突き飛ばされてスイッチが入りました。入場の時から気持ちが入っていて“これだ”という感じ。やっと見つけた、掴んだなと」
ブレイキングダウン3連敗のハイメは必死だった。開始直後からラッシュ。それに呼応することで、外枦保もポテンシャルを解放していく。打ち合いの中、精度でも威力でも上回る。パンチだけでなく蹴りも効果的に使っていた。フィニッシュとなる2度目のダウンはパンチから蹴り、さらにパンチへの連打。反撃する隙も与えなかった。復活のKO勝ちを収めた外枦保は、やはりこう叫んだ。
「母ちゃん、勝ったよ!」
初戦と同じ言葉。しかし今は状況が違う。どこにいるか分からない母にではなく、中継を見ている母へのメッセージだ。控室に戻ると、母から祝福のLINEが届いていた。
外枦保の夢「ブレイキングダウンの顔になりたい」
「頭を下げながらパンチを打ったり、変化をつけていけばもっとよかったですね。でもブレイキングダウンらしい試合ができたと思います。ハイメ選手があの闘い方(打ち合い)なのは分かっていたので、近い距離での闘いを練習してきました。
それと試合に集中できてたなと思います。お母さんのためにというだけではなくて、今回は勝ちにこだわることがテーマでした。甘いところは見せないぞと。それでうまくいきました。お母さんと再会できて、今はありのままの自分を出して闘うことができてるなと思います」
ファイターとしてはここからが本番。先々の目標としてプロも視野に入れつつ「ブレイキングダウンの顔になりたい」と言う。
「やっぱり格闘技が好きなので。シンプルに強さを求めていきたい」
普段は建設現場で「足場屋」として働く。朝早くからの作業、SNSでも「ご安全に」の挨拶が恒例だ。今年の夏はとりわけ暑かったが「その分、気持ちが強くなった気がします」。
仕事があって強さにつながっている、練習の一環みたいなものですと外枦保。根っからの真面目さはブレイキングダウンらしくないように見える。しかしそれが“実力派”として大きな武器なのは間違いない。