テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
大谷翔平の負傷禍を“取材歴10年”番記者が検証…日本ハム時代から「中指をつった」記録はなかったが「例えばもう一回ケガをして」の真意
text by
柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/09/07 06:00
8月3日、マリナーズ戦に登板した際の大谷翔平
2度目の“けいれん”が起きた翌日の29日の試合前会見で、記者はフィル・ネビン監督に「大谷は病院に行ってMRI検査は受けたか? エックス線検査は受けたか?」と尋ねた。ネビン監督は「ノー。球団の医療スタッフに診てもらい、大丈夫だった。リスクがあると思ったら出場させない。我々を信じてほしい」と返答した。
その後も「ただのけいれん。状態は良い」と繰り返すだけだった。この時、球団やネビン監督が検査の必要性をどれだけ感じていたかは分からない。記者自身も分からなかったが、「酷暑」や「疲労蓄積」などを理由に楽観視していた部分は少なからずあっただろう。
二刀流で酷使する肉体の疲労度は大谷自身しか分からない
ちなみに、ネビン監督は選手とのコミュニケーションを重視し、大谷との関係性は歴代監督の中でも最も良好だ。自己管理能力に優れる大谷が「大丈夫」と言えば出場できる環境はメリットが大きく、“伝説の一日”も大谷が自ら申し出て登板予定を1日前倒してスーパーパフォーマンスを実現させた。
日本ハム時代の恩師で3月のWBCでも指揮を執った栗山英樹氏のように、コンディションを最優先させて大谷を強制的に欠場させる首脳陣がいないのは痛恨だったが、前例のない二刀流で酷使する肉体の疲労度は大谷自身しか分からない。大谷はその時、その時で自ら最終判断を下し、力を尽くした。休養を十分に空けていたとしても、同様のケガをした可能性はある。
大谷が「できる限りの体調管理はしてはいる。その中で出られるという判断にはなったので、結果的にこういう形になってしまって申し訳ない」と語ったように、この反省を今後に生かすしかないだろう。
思い出す「二刀流は何歳までやりたい?」への答え
4日の試合前のフリー打撃では右脇腹を痛めて108試合ぶりにスタメンから外れた。報道陣の目を避けるためにネズ・バレロ代理人の会見中にフリー打撃を行うところに目立つのを嫌う“大谷らしさ”が久々に垣間見えたが、これまで脇腹に大きな故障を負ったことがなく、負傷の程度が心配される。
大谷の二刀流が当たり前だと思ったことはこれまで一度もない。先発ローテーションで回りながら、DHで出場し続けるという二刀流とはそれほど過酷であり得ないことなのだ。休養日なしの二刀流が本格スタートした21年から2年5カ月。これまで奇跡を見ていたと言っても過言ではないのだ。
今、鮮明に思い出す。20年シーズン終了後の単独インタビューで「二刀流は何歳までやりたい?」と尋ねた時のことだ。大谷は「うーん……」と考えた後に胸中を明かした。