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“裏番組”のBreakingDownに対抗心…「本物が殴り合ったらどうなるか」RISE新王者・YA-MANが壮絶な“命の削り合い”で見せつけた矜持
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph bySusumu Nagao
posted2023/09/03 17:00
「本物の殴り合い」を体現してRISEのOFGマッチの初代王者となったYA-MAN。同日に行われた“裏番組”のBreakingDownも強く意識していた
YA-MANが出場したRISEの裏では話題のBreakingDownが行なわれる予定になっており、それを強く意識した発言だった。
ふたりは笑みを浮かべて命を削り合った
振り返ってみれば、山口裕人との対戦カード発表記者会見のときからYA-MANは実に穏やかだった。お互いをリスペクトしたうえでの一戦であることを強調するかのように、ときには笑みを浮かべるシーンもあった。BreakingDownが「売り」にしている罵り合いや乱闘に発展しそうな空気は皆無だった。
BreakingDownに対する発言を耳にした時点で、筆者はYA-MANの強い覚悟を感じた。トラッシュトークや乱闘は確かにわかりやすい。対戦を煽るという意味で否定するつもりもない。YA-MANとて、『THE MATCH 2022』で芦澤竜誠との対戦が決まったときには、周囲の選手が“ドン引き”するほどの乱闘を演じている。
しかし、その先のフェーズを迎えたファイターとして、自分は何を表現できるのか。その答えを今回の王座決定戦で見せたい。少なくとも筆者はそう受け取った。
果たして、山口との攻防は“血闘”と呼ぶに相応しいものになった。流れの中で山口が敵に背を向ける展開はあったものの、自らの意志でそうなる場面はなかった。極限まで鍛えた者同士が、相手が倒れるまで思い切り殴り合う。ときには笑みを浮かべながら。
そうした中、先に記したようにYA-MANがダウンを奪われるというサプライズが起こる。しかし、その直後YA-MANが左でダウンを奪い返す。ダウンカウントが進む中、立ち上がってきた山口はやはり笑っていた。さらにその面持ちのまま、指で手招くようにして「来いよ」と促す。鳥肌が立った。ふたりとも命を削り合っているではないか。その刹那、YA-MANが再び右フックでダウンを奪っても、山口の目は死んでいなかった。
勝負の分岐点は1ラウンド終了後のインターバルにあった。このとき、YA-MANはセコンドの声で当初の対策を思い出すことができたというのだ。我に返ったOFGの申し子は視界を狭めた殴り合いモードから、いつもの冷静沈着なファイターモードへとギアを変えた。それを裏付けるかのように、試合後にはこんな発言をしている。
「1ラウンドは速攻で終わらせようとして、試合に入りすぎていた」
2ラウンドになって、ガードが幾分高くなったのは試合を俯瞰して見られるようになったからだろう。YA-MANは右フックで立て続けにダウンを奪って熱戦に終止符を打った。