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“裏番組”のBreakingDownに対抗心…「本物が殴り合ったらどうなるか」RISE新王者・YA-MANが壮絶な“命の削り合い”で見せつけた矜持 

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布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

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photograph bySusumu Nagao

posted2023/09/03 17:00

“裏番組”のBreakingDownに対抗心…「本物が殴り合ったらどうなるか」RISE新王者・YA-MANが壮絶な“命の削り合い”で見せつけた矜持<Number Web> photograph by Susumu Nagao

「本物の殴り合い」を体現してRISEのOFGマッチの初代王者となったYA-MAN。同日に行われた“裏番組”のBreakingDownも強く意識していた

「無名の凡人」がスターダムに駆け上がるまで

 通常のボクシンググローブより“アンコ”の部分が薄いOFGで、プロのキックボクサーが殴り合ったらどうなるのか。スリルに満ちたOFG路線はストリートファイトに似た緊張感を生み出し、YA-MANを覚醒させるきっかけを作っていく。

 YA-MANがスターダムに駆け上がっていった理由はそれだけではない。幼少期に父親が違法薬物で逮捕。裕福だった父方の実家から3000万円の養育費が振り込まれたが、それを預けた母方の両親は大金をもったまま行方不明に。さらに頼みの綱である母親もガンに冒されるという、壮絶としかいいようのない彼のサイドストーリーも人目を引いた。

 今年5月6日にはRIZINでMMAファイターとしてもデビューを果たし、三浦孝太を1ラウンドTKOで撃破したことは記憶に新しい。OFGマッチを中心に活動するようになってからの戦績は8勝(6KO)1敗と大きく勝ち越しているが、白眉は“令和の成り上がりストーリー”だけで終わらなかったところだろう。自分の闘いを見た者に「俺ができるんだから、お前もできる」と思わせることで、メッセージ性の強いファイターへと変貌を遂げたのだ。今回の戴冠直後も、YA-MANは「まだ何者にもなっていない人々」にマイクを通してエールを送った。

「自分も2年前までは何も持っていない、ただの無名の凡人だった。ただ、その日(OFGマッチデビュー)から明日のことを考えずに1日1日を頑張って、昨日できなかったことを今日できるように努力してきた結果がこのチャンピオンベルトだと思う。生まれた環境なんか関係ない。俺もこの先、みんなに背中を見せられるように頑張っていくので、まだ成り上がっていない人は俺の背中についてきてください」

“裏番組”BreakingDownへの対抗心も

 この一戦はチャンピオンベルト以外のものもかかった一戦だった。8月上旬に行なわれた公開練習。試合までまだ3週間もあるというのにもかかわらず、YA-MANはすでに「出来上がって」いるように見えた。そう思わせるだけの鋭く正確なパンチをミットに放っていたのだ。

 その後に行なわれたインタビューが終わりに差しかかった頃、誰かの質問に受け答えする形ではなく、YA-MANは自ら強い口調で言い放った。

「8月26日はBreakingDownもやってると思いますが、本物がオープンフィンガーを着けて本当の殴り合いをしたらどういう試合になるのかを見てもらいたい」

【次ページ】 ふたりは笑みを浮かべて命を削り合った

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