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「私、希実のこと大好きなの」女王ハッサンが田中希実を大絶賛! 世界陸上5000mで日本記録更新に田中は「タイムとしては100点満点!」 

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及川彩子

及川彩子Ayako Oikawa

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/08/26 20:00

「私、希実のこと大好きなの」女王ハッサンが田中希実を大絶賛! 世界陸上5000mで日本記録更新に田中は「タイムとしては100点満点!」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

世界陸上5000m予選で日本記録を大幅に更新する走りをみせた田中希実

「あと1000mを3分10秒で走っても日本記録だと思ったが、でも(9着以内に)入れなかったら悔しいので、意地でも順位を落とさないように意識した」

 残り600m。集団に少し離されると田中は一瞬、視線を下に落とす。

(ここで諦めちゃいけない)

 そんな言葉をかけて自らを奮い立たせたのだろうか。ゆっくりと頭を上げ、視線を前に向けた。 

 最後の1周でさらにペースを上げ、14分32秒29でフィニッシュしたハッサンから遅れること5秒。 

 田中は最後の1000mを2分53秒でまとめ、これまでの日本記録(14分52秒84)を大きく更新する14分37秒98の6位に入り、世界陸上3大会連続での決勝進出を成し遂げた。

 レース前には不安もあった。

「スタートラインに立って誰も飛び出さなかったらどうしよう、スローになったらどうしようという不安があった」と吐露した。

 田中の前の組ではラトビアの19歳のカウンがスタートから飛び出し、最後は集団に吸収されたものの、4位で決勝進出を果たしていた。招集所で1組目のレース展開を見た田中の脳裏に、カウンのように行こうかという考えもちらりとかすめた。

 レースの流れを見ながら考えよう。

 そう思ってスタートラインに立ったが、ハッサンの飛び出しで覚悟が決まった。

世界を転戦するための大きな一歩

 世界陸上などの大きな大会では、ハイペースでレースを作ってふるいをかけ、集団の人数が減るとすぐにペースを落とすような戦略をとる選手もいる。ペースの上がり下がりが激しいレースは、心身ともに消耗するが「ハッサン選手は1500mを終えたばかりなので極端なレースはしないと思った」と田中。

 その気持ちに応えるようにハッサンは正攻法で攻め、田中はそれに乗った。

【次ページ】 世界を転戦するための大きな一歩

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