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「私、希実のこと大好きなの」女王ハッサンが田中希実を大絶賛! 世界陸上5000mで日本記録更新に田中は「タイムとしては100点満点!」
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/26 20:00
世界陸上5000m予選で日本記録を大幅に更新する走りをみせた田中希実
「この記録でダイヤモンドリーグなど世界を転戦するための大きな一歩になった」
東京五輪、そしてオレゴン世界陸上以降、どんなレース展開にも対応できるように様々な練習に取り組んできた。ケニアにも足を運び、自分の走りの引き出しを増やす努力をした。
しかし今大会の1500mは予選、準決勝ともに「無駄な動きが多かった」と反省が口をついたように不完全燃焼に終わった。
中距離はレース戦略が結果を大きく左右する種目だが、田中は世界トップレベルでのレース経験がさほど多くはない。
陸上の最高峰ツアー、ダイヤモンドリーグの試合に出られるのはごく限られた選手のみで田中が出場を希望しても自己記録の速い選手が優先されるため、出場機会が回ってこない。
決勝でメダル争いをする選手たちは高いレベルの大会で何度も対戦し、相手の手の内、動きや癖を知り尽くしているが、田中はその経験を積むことができないまま、世界陸上に臨むことになった。
1500mのレース後に「自分がしたいことをさせてもらえないというところで、世界の壁を感じた。技術の部分で特に劣っていたんじゃないかと思う」と話したが、経験の差が結果の差になってしまった。
もどかしさ、悔しさ。
どのような練習やレースをしたら世界と戦えるのか。
1500mの後はそんな気持ちで一杯になったのではないだろうか。
5000m予選後、田中は少しはにかみながら、待ち受ける記者の前に姿を現した。
「自分の理想通りに(予選を)通過することができた。タイムとしては100点満点。昨年一昨年くらいから理想として14分30秒台はあったが、実際とかけはなれていたので(理想とタイムが)やっと合致したという感じ」
久しぶりに満足いくレースだったのだろう。何度も笑みがこぼれた。
ハッサン「私、希実のこと大好きなの」
笑顔の田中が立ち去った後、ハッサンが姿を現した。