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「走っていないことに不安はない」カープ床田寛樹が今季絶好調の理由は走り込みしなかったから? どうなる球界の常識
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/28 06:00
走り込みを行わずとも今季好調の床田。8月25日時点で10勝、防御率2.03と、どちらもリーグ2位の好成績を残している
「探り探りではありました。調整段階が上がっていく確認をして、(メニューを)足していった感じです。正直、なるようにしかならないと思っていたところもありました。結果がずっと良かったので、これでもいいんだと思えるところがあった。結果が出ていなかったら走る量を増やそうという方向を向いていたかもしれない」
床田は開幕から快調に飛ばした。もともと投球術に長け、技術力があるからこそ、可能だったのかもしれない。5月に左肘の炎症で登板間隔を空けることはあっても、走り込み不足を感じさせることはなかった。
新体制がもたらした恩恵
新体制の方針もそのアプローチを後押しした。今季はトレーニングコーチの意見や考えを積極的に聞き入れ、取り入れてくれる。昨季までは従来の調整法を重んじ、走り込みの量を求められた。直接的でなくても「走り込ませないと」「練習時間短くないか」などという声が上がることもあり、調整法を変えづらい環境にあった。また今季は、先発ローテーション投手の登板間隔を柔軟に変える起用をしてきたこともプラスに働いた。
「ずっと中6日だとメリハリがつかなくなるところ、いろんな事情が重なって疲労が少ない状態で挙げられていたのかなと思います」
一定スパンで調整プランを練り、強弱をつけた調整ができた。負傷明けのシーズンというだけでなく、床田にとって鬼門だった夏場も乗り越えることができた。
昨季は8月の後半戦初登板で右足を負傷した。7勝した2019年も7〜8月はわずか1勝に終わっている。秋口から調子を上げるシーズンもあり、担当コーチから「スズムシ」と呼ばれることもあった。
「走っていても走っていなくても、もともと夏への不安があった。走っていないことに不安は、別になかったです」
この8月は登板4試合で1勝2敗、防御率2.77。今季の月間成績では最も悪い数字ではあるが、夏を乗り越えた床田は自身初の規定投球回到達まであと15イニングを切った。