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「走りもダメダメ」世界陸上100mで6位の快挙も…サニブラウンは、なぜ悔しがったのか? 五輪金メダリストが指摘した”ある課題”とは
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/25 06:00
世界陸上100mで2大会連続決勝に進出したサニブラウン。自己最高の6位となるもレース後には悔しそうな表情をみせた
「決勝に進んだ全員にメダルを取る権利がある。その中で『自分が絶対にメダルを取る』と信じてスタートに立っている選手は何人いる? 取ると思わなかったら、絶対に取れない」
人類最速をかけた戦いを制するのは、自分を信じ、前だけを見て走った選手で、迷いがある選手に勝利の女神は微笑まない。
「心身ともに準備万端でレースに臨んでいたら、走りながら技術的なことを考える必要なんかない。やってきたことを出すだけだから。でもプレッシャーを感じると、技術的な部分が気になってミスが出る。決勝の(クリスティアン・)コールマン、サニブラウンは考えながら走っているように見えた。準決勝の走りをしていればメダルが取れたはずだ。一方でノア(・ライルズ)は気負わずに楽に自分のレースをした。勝つという強い気持ちと自信を持っていたから勝てたんだ」
自信を持ってレースに臨むために必要なものは何か。
「日々の練習に課題と目標を持ち、一つずつ達成していくことが必要だ。練習でできていないことは、試合でもできない。100mは考えながら走る競技じゃないんだ。号砲が鳴ったら、無心で走るだけだ。周りを気にしたり、考えたら乱れてしまうから。すべてをやり切ったと思ってスタートに立たないといけないんだ」
「レースの主役は自分」だと思って走ってほしい
グリーンの指摘が正しければ、コールマンはプレッシャーから、サニブラウンは技術的な不安があり、考えながら走ってしまったことがメダルに届かなかった要因のようだ。
グリーンは最後にこう付け加えた。
「決勝に進むことは素晴らしいことだ。でもそれ以上に素晴らしいのは、表彰台でメダルを取ること、頂点に立つことなんだ。俺はいつもレースに出るとき、俺のために開催されるレースだと思っていた。人のレースに出たって楽しくないだろう。レースの主役は自分だ。そう思って走ってほしい」
今回メダルに届かなかった選手たちが、来年のパリ五輪、そして次の世界陸上でどんな変化を見せ、どんなレース展開をするのか、楽しみに見守りたい。