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「走りもダメダメ」世界陸上100mで6位の快挙も…サニブラウンは、なぜ悔しがったのか? 五輪金メダリストが指摘した”ある課題”とは
posted2023/08/25 06:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
JIJI PRESS
「めちゃくちゃ悔しい。走りもダメダメだったと思う」
世界陸上100m決勝のレース後、報道陣の前に姿を現したサニブラウン・アブデル・ハキームは首を振りながら開口一番こう発した。
8月20日、午後7時10分。
サニブラウンは8レーンに入った。
スタジアムの満員の観客が見守る中、号砲が鳴る。
飛び出したのは4レーンのコールマンでキレのある足捌きでリードを奪う。サニブラウンはスタートから加速でややもたつき、上体を上げたときには左側にいるライバル選手たちにはすでに体一つ以上離されていた。グングンと力強くトップスピードに乗る他の選手たちと比べ、サニブラウンは重心が落ちたフォームでスピードに乗れない。必死に腕を振るが、気持ちが焦ったのか上半身が前に出てしまい、その影響でストライドも大きくなってしまった。
結果は首位と0秒21差の10秒04で6位。
前回大会から一つ順位を上げたものの、もったいないレース運びのように感じられた。
ファイナル進出で十分ではないか、よくやった、と思う人もいるかもしれない。
しかし「もったいない」と表現したのには理由がある。
初日の予選を組1位の10秒07で通過し、臨んだ準決勝では9秒97の自己記録を出し、組2位で決勝進出を決めている。スタートから加速面できれいにスピードに乗り、昨年の世界陸上以来の9秒台を出した。そのスピード感は筋肉に刻まれていたはずだ。
メダルに必要なのは安定性と再現性
決勝でそれを再現できなかったのが本人の「悔しい」という言葉に表れているのではないだろうか。