オリンピックPRESSBACK NUMBER
「走りもダメダメ」世界陸上100mで6位の快挙も…サニブラウンは、なぜ悔しがったのか? 五輪金メダリストが指摘した”ある課題”とは
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/25 06:00
世界陸上100mで2大会連続決勝に進出したサニブラウン。自己最高の6位となるもレース後には悔しそうな表情をみせた
スプリント界に君臨したウサイン・ボルトの引退から6年。それ以降の世界陸上、五輪の100m覇者はすべての大会で入れ替わっている。
本命不在の男子スプリント戦国時代ともいえる今大会を制したのは米国の26歳ノア・ライルズで、世界陸上では過去2大会で200mで連覇をしているが、100mはこれが初の金メダルとなる。
大会前から「俺が勝つ」と豪語し、「100mは9秒65、200mは(ウサイン・ボルトの世界記録を上回る)19秒10で走る」と宣言していた。
優勝タイムは目標の9秒65には遠く及ばなかったものの、予選から安定感のあるレース運びで、まず一つ目の金メダルを手にした。
1位のライルズ、2位のテボゴ(ボツワナ)、3位のヒューズ(英国)に共通する点がある。予選から決勝までタイムを上げている。これは予選から決勝までラウンドを重ねていくレースにおいて理想的な形だ。一方、サニブラウンを含め、5位以下の選手は準決勝から大きくタイムを落としている。
予選 準決勝 決勝
1位 ライルズ 9秒95 9秒87 9秒83
2位 テボゴ 10秒11 9秒98 9秒873
3位 ヒューズ 10秒00 9秒93 9秒874
4位 セヴィル 9秒86 9秒90 9秒877
5位 コールマン 9秒98 9秒88 9秒92
6位 サニブラウン 10秒07 9秒97 10秒04
7位 オマンヤラ 9秒97 10秒01 10秒07
8位 フォルデ 10秒01 9秒95 10秒08
メダルを取るレベルの選手たちは、予選、準決勝でそれぞれ取り組むテーマ、そして減速する距離を決めてレースに臨む。いかに余力を持って次のラウンドに進めるかを考えているからだ。逆にぎりぎりのラインで決勝を狙う選手は、準決勝を100%で走り切らないといけない。その余力の差がダイレクトに結果に結びついたと言える。
メンタル面を指摘する金メダリスト
「ファイナリスト(入賞者)とメダリストを分けるのは『メンタル(気持ち)』」と断言するのは、シドニー五輪金メダリストのモーリス・グリーンだ。