互いに態度を硬化させてしまっては、状況が好転するはずもない。私と担当者の関係は悪化の一途をたどり、しまいには日本、ジンバブエ両国の外務省、JICAの人間が出てくる事態にまで発展した。

謹慎中の『ダービースタリオン』

　その間は普及活動を休止させられ、住居も学校の寮からブラワヨ市内のアパートに移されてしまう。「今は学校を回れないが、自分にできることをやろう」と、活動中に必要性を痛感していた野球の指導書を英語で制作したり、競技が広がるにつれて存在が重要になってくる審判員のマニュアルを手書きで作成したりしていた。また、手元には先代の隊員が「よかったら使ってくれ」と残しておいてくれたパソコンがあり、「使えたら後々便利そうだな」と、起動して活用方法を模索したりもした（と言いつつも、実際にパソコンでやったことといえば、競走馬育成シミュレーションゲームの『ダービースタリオン』が大半だったのだが）。

なんでオレが謝らねえといけねえんだよ！

　だが、私は「野球を世界に広める」という使命感に突き動かされてジンバブエにまで来た人間だ。原因は自分にあるが、3カ月近くも干され、最悪の事態と言える“強制帰国”すらもチラつかされる状況に、苛立たないわけがない。知り合いも少なかったので、しょっちゅうモーリスに愚痴をこぼした。

　ある日、ハンバーガーショップで昼食をとっていると、モーリスに「お前が頭を下げれば済む話だろ」と諭された。

©Tamon Matsuzono

　私は当時24歳。モーリスは17歳である。今思うと大した差でもないが、生意気な若造からすると、7歳下の少年に指図されるのはおもしろくない。すぐに反論した。

「なんでオレが謝らねえといけねえんだよ！　そもそも原因はあっちだろ！」

お前のために謝れって言ってるんじゃねえんだよ！

　これを聞いたモーリスは、涙を流しながら私の胸ぐらをつかんで、まくしたてた。

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