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ボクシングPRESSBACK NUMBER
「イノウエの練習相手が次々に壊れて…」なぜ米国の元アマ王者が井上尚弥の“仮想フルトン”に指名された?「オオハシに警告されたよ…ヤバいぞって」
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph bySoichi Hayashi Sr.
posted2023/08/19 17:03
“井上尚弥のスパーリングパートナー”ジャフェスリー・ラミド(23歳)。仮想フルトンの役を担った
「ノニト・ドネア第1戦の前だった。物凄い強さだと聞いた。するとジャフェスリーが『その彼と、スパーリングをしてみたい』って言ったんだ。この界隈でのフェザー級、及びスーパーバンタム級では息子がナンバーワンだったから、オオハシに打診してみた。すると、『無茶苦茶強いよ。大丈夫?』という返事だった。なので、『もちろん。ウチの倅は全米のトップアマだよ』って伝えて、ハリウッドにあるワイルドカードジムで実現したんだ」
「イノウエにヨコハマに呼ばれたんだ」
インゲマールは、井上尚弥と愛息のスパーリングをつぶさに見た。
「ナオヤは、どのパンチも破壊力抜群だった。本当に危険な選手だと度肝を抜かれた。そればかりか、彼のスピードはエクストラ(特別)だった。ボクシングIQも高い。まるで科学者のようだよ。
フェイントで釣ったり、強弱をつけたコンビネーションで獲物を捕えたりと、チェスのように罠を仕掛けては重いパンチを打ち込んでくる。物凄く考えているね。3つのジャブを放ったかと思ったら、パッと懐に入るとか、少しだけ動きを止めてカウンターを誘うとか、攻撃のバリエーションも数え切れない。タイミングの取り方なんて圧巻だった」
初日は4ラウンド、その次は8ラウンドと、井上尚弥と拳を交えることで、ジャフェスリー・ラミドは計り知れない経験を積むこととなった。
「ジャフェスリーにとっては、これ以上ない勉強になったよ。クリーンヒットも貰ったが、我が子だってディフェンス力には自信を持っている。ナオヤとのスパーリングで、息子は大きく成長した。私以上に本人がそれを実感している。
パートナーとして評価されたので、ヨコハマに呼ばれた。ナオヤだけでなく、弟のタクマ(拓真)ともスパーをした。今回のスティーブン・フルトン戦の前には、まず3週間ジャパンに滞在してスパーを重ねたんだ。5月上旬に組まれた試合が延期になる前のことさ。こちらもコリアでのイワサ戦を控えていて、試合後2日休んだだけで、直ぐにまたナオヤのパートナーに戻ったんだよ」
ラミドーーー
— 井上尚弥 Naoya Inoue (@naoyainoue_410) June 23, 2023
上手くて速い。。
仮想フルトンにはもってこいの選手だ pic.twitter.com/ttx4q1YTZi
当然のことながら、インゲマールもWBC/WBOスーパーバンタム級タイトルマッチに注目していた。
「フルトンではナオヤの相手にはならないと見ていた。2ラウンドの途中で、画面に映ったフルトンの目を見て、勝負あった、KOは時間の問題だなと感じだ。怯え切った表情だったからね。しかし、ナオヤという男はブルース・リーを超えるヒーローかもしれないね」
だが、井上尚弥のスパーリングパートナーだったジャフェスリー・ラミド自身は、フルトン戦は拮抗したファイトになる、と予想していたという。
ジャフェスリーに井上尚弥について訊ねた。あの“衝撃の右ストレート”を暗示する会話をフルトン戦の1カ月前にしていたという。
<続く>