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「フリーターでした。夜な夜な友達と…」青学大も野球部も辞め、WBC侍ジャパンのコーチが“野球を諦めた日”…人生を変えた「栗山英樹の本」
text by
城石憲之Shiroishi Noriyuki
photograph byJIJI PRESS
posted2023/08/24 11:02
2018年、日本ハム時代の栗山英樹監督と城石憲之コーチ
「手伝ってやろうか」父の言葉
ちょうどその頃のこと、突然父親が「お前、もう一回野球やる気ないのか。野球やるんだったら、俺が手伝ってやろうか」と言ってくれました。
大学を辞めるときには激怒した父でしたが、その後、僕がフラフラしている間は、「就職しろ」とも「遊ぶな」とも一切言いませんでした。
ずっと実家にいて、夜遊びしては朝に帰ってくるような息子を見ていて、どんなに不安だったろうかと思います。
今思えば、父親はその不安を押し殺して、僕が自発的に何かをやり始めるのを待っていたのかもしれません。
そして、見ていないようでよく観察していて、僕が野球をやりたいと思っているのを感じ取ったタイミングを逃さずに、助け船を出したのではないかと思います。
僕は迷わずお願いしました。
父とのキャッチボールで感じた喜び
こんなことを続けていてもしかたないという思いは日に日に強くなり、また自分が本当にやりたいのは野球だという思いも強くなっていました。
栗山選手の本で生まれた欲求。それが父親の言葉ではっきりしました。スイッチが入ったように感じました。
しかし、手伝うといっても父親には仕事があります。仕事前の朝5時に近くの公園のグラウンドに行って、キャッチボールをして、ノックをしてもらいました。
それが何月のことだったか正確には覚えていませんが、大学を辞めてから1年以上過ぎていたと思います。
親子二人の自主トレは、野球と呼べるものではありませんでしたが、それでも僕は野球ができる喜びを体じゅうで感じていました。
<「大谷翔平の衝撃」編に続く>