甲子園の風BACK NUMBER
「自由に選んだ」坊主頭…“サラサラヘアー”慶応に立ちはだかる名門・広陵“丸刈り軍団”の理由は? 中井哲之監督が明かす「髪を伸ばすのは嫌です!って」
text by
酒井俊作Shunsaku Sakai
photograph byNanae Suzuki
posted2023/08/16 10:00
昔ながらのヘアスタイルを自ら選択している広陵高校の球児たち
ともあれ、そのリアル版が実現するわけだが、広陵のベテラン監督、中井哲之は髪型論争にどこ吹く風である。舌鋒鋭く、厳格な雰囲気も漂わせる名将も61歳になった。この日、甲子園通算38勝目を挙げた後、慶応義塾ナインの髪型が話題になると、両手を肩にかけながらおどけた。
「僕、もっと長くしたいですよ」
直前まで頭を丸めた自校の生徒たちがガッツを見せていただけに、あまりの落差に報道陣も呆気に取られている。そんな空気を察したのか、監督自ら丸刈りにまつわる裏話を明かした。
「僕は長髪でもいいと言うんだけど、彼らが『僕らの代で広陵の歴史、伝統を変えるわけにいきません』と言ってくるんです。ハヤカ(主将の小林隼翔)なんか(髪を伸ばすのが)『嫌です』って言うんですから」
「強制」ではない丸刈り
広陵は日本の野球界を支えてきた伝統校である。1911年に創部され、多くのプロ野球選手を輩出した。中井も金本知憲、有原航平、佐野恵太らを育てた。丸刈りは名門ならではの鉄の掟なのかと思いきや、それだけが理由ではなさそうだ。
中井の説明を聞こう。
「もともと短こうしてて、広島大会の決勝で勝った後『勝ち進んだら、先生、散髪屋に行かれません』って言うんです。なるほどって思いました。中途半端な坊主頭が一番、カッコ悪い。ウチはみんながすると言ったら、みんな一緒の髪型なので」
3月のセンバツで4強。その後も公式戦14連勝の勢いで5年ぶりに夏の甲子園に進んだ。丸刈りは強制ではなく、ナインが自分たちで決めた「ゲン担ぎ」だという。