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両親に「陸上はいいけど、婚期を逃すのだけはやめてね」と言われ、中学生で“30歳引退”を決意…森智香子30歳が明かす「それでも引退を撤回した理由」
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2023/08/13 17:02
中学の頃から「30歳で引退」という競技人生を思い描いていた森智香子(積水化学)。一体、どのような変化があり、30歳の今も現役を続けることになったのか
野口監督と話をして、森は8月から2カ月間、休むことになった。最初は、寮に引きこもっていたが、ある時、大東文化大学の外園監督から連絡があり、『うちに来いよ』と誘ってくれた。監督の家に滞在し、部活にも顔を出し、走れないまでも後輩に自分の経験を伝えたりして、時間を過ごしていた。
そこからがまたドン底でしたね
「あのまま寮に引きこもっていたら、たぶん陸上と完全に距離を置いて、戻れなかったと思います。大学では後輩たちを応援して、トレーニング後にみんなと軽くダウンジョグをしたり、陸上に携わりながら過ごせたので、ちょっとずつ気持ちが前向きになれて、走る準備ができてきました。声を掛けてくださった監督はもちろん、後輩たちも『何で走らないんだろう』って思っていても何も言わずに受け入れてくれた。本当にありがたかったですね」
10月初旬に復帰し、11月25日のクイーンズ駅伝に出場することを目標にして、トレーニングを開始した。森は支えてくれた人たちに感謝の気持ちを込めて6区(6.795キロ)を走った。
「でも、そこからがまたドン底でしたね」
競技は30歳までと考えていた
2019年の日本選手権の3000m障害は8位、20年は10位に終わった。自己ベストを更新できず、上位で走れない、もどかしい状況が続いた。
「結果も出ないし、競技は30歳までと考えていたので、もうやめようと思っていました」
森は、中学の時から「30歳での引退」を考えていたという。
「中学の時、自分の年齢を逆算して『28歳で東京五輪に出て、29歳の世界陸上が最後』と自分の中で決めていました。それは、両親に『陸上を続けていくのはいいけど、婚期を逃すのだけはやめてね』と言われたのがずっと残っていて、私自身も結婚願望が強く、出産することを考えると、やっぱり30歳が目安というか、区切りになると思っていました」