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「イノウエをPFPの“王”にしたい」「どちらも“1位”に」井上尚弥の順位をめぐって前代未聞の意見が…伝統ある米リング誌の会議で一体何が?
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byNaoki Fukuda
posted2023/08/05 11:04
スーパーバンタム級の初戦で王者フルトンに圧勝した井上尚弥
昨年6月、宿敵ノニト・ドネア(フィリピン)を再戦で粉砕した直後、井上は短期間ながら日本人ボクサーとしては史上初めてリング誌のPFPランキングでトップに立った。それから約1年が過ぎ、日本が産んだ最高傑作は再び“世界最高のボクサー”として認められるのか……。
ところが先週末、少々信じ難いことに、井上からバトンを受け取ったクロフォードは実際に“とてつもない勝ち方”をしてみせたのだ。
リング誌のPFP3位だったクロフォードは、同4位のスペンスとのウェルター級頂上決戦で3度のダウンを奪って圧勝。もともと優位と見られてはいたものの、接戦予想が大多数な中で、クロフォードの技量は際立った。スピード、スキル、パンチのキレ、ディフェンスのすべてで圧倒し、“ミドル級でも戦える”と評されるほどの大柄なフレームを持つスペンスを寄せ付けなかった。すべてのボクシングファンを唸らせた勝利の後で、PFPランキングも再考を余儀なくされたのである。
実力に見合う人気を得られなかった35歳
「疑いもなく、この試合の勝者が(PFPでも)No.1になるべきだ。トップ5に入る2人が戦ったんだから。もちろん俺がNo.1だ」
試合後、会見の壇上でのクロフォードのそんな言葉は、35歳の黒人ファイターの視野に紛れもなくPFPトップの称号が入っていたことを物語る。
以前、井上も言及していたが、米リングでPFPボクサーとして認められることは商品価値に直接的に影響する。これまでプロモーターの関係などでなかなかビッグファイトを実現できず、やや地味なパーソナリティもあって、クロフォードはその実力に見合った知名度、人気を獲得できていなかった。そんなスピードスターがスペンスとの決戦を制し、ここでついに“我が世の春”を迎えたという実感があったに違いない。