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「イノウエをPFPの“王”にしたい」「どちらも“1位”に」井上尚弥の順位をめぐって前代未聞の意見が…伝統ある米リング誌の会議で一体何が?
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byNaoki Fukuda
posted2023/08/05 11:04
スーパーバンタム級の初戦で王者フルトンに圧勝した井上尚弥
「私が少数派なのは分かっている。どちらが1位でも誤りではないと心底から感じている。しかし、私は井上をPFPの王とすることにこだわりたい。井上はプロでわずか25戦目にして4階級王者となり、元4団体統一王者だ。彼はスーパーバンタム級でNo.1と評価されていた選手を同階級での初戦で圧倒したんだ。クロフォードがより実績、知名度があるスペンスを圧倒したことは分かっているが、私はテキサン(スペンス)の交通事故、目の手術、減量苦、ライフスタイルといった背景を見逃せない。フルトンの方がよりフレッシュで多才なボクサーだったと思う」
クロフォードの勝利を貶める意図はなくとも、実際に今回のスペンスはベストコンディションではなかったという見方は現場でも囁かれていた。大柄な身体でウェルター級の体重を作り続けたがゆえの減量苦か、交通事故、網膜剥離によるブランクの影響か。「2019年の交通事故前と後ではスペンスの話し方は変わってしまった」というスポーツイラストレイテッド誌のクリス・マニックス記者の意見も無視できない。
そういった背景から、体調は問題なく、年齢的にも今が全盛期のフルトンを寄せ付けなかった井上の勝利をより評価するという見方も理解できるところではある。
また、冒頭で述べた通り、シンプルにクロフォードに票を投じなかったもう1人のパネリストであるゴンサレス記者は、“1位タイ”という興味深いアイデアを提唱した。実行していたら議論沸騰していたであろうこの斬新な案は、多くの支持は得られなかった。それでも最終的にクロフォードを推したアダム・アブラモビッツ氏(アメリカ)、ディエゴ・モリージャ氏(アルゼンチン)らも、“井上、クロフォードのどちらが1位でも間違いではない”“その差はごくわずかだ”という言葉を付け加えていたことは記しておきたい。
無敗のアメリカ人王者を倒した価値
すべての後で、今回のランキング選定委員のやりとりから感じられたのは、井上が真の意味で世界的なリスペクトを集めるビッグネームになったということ。チェーンメールでの中身からその現実が分かり易い形で伝わってきていた。
やはり無敗のアメリカ人王者との対戦は、米国内のメディア、ファンへのアピールという意味では特に大きかったのだろう。ここでの1位復帰は惜しくもならなかったものの、現代の覇者を決めるストーリーは終焉していない。井上の今後のリング登場は、“世界最高のボクサー”という称号をかけた歴史との戦いであり続けるといっても、もう大袈裟ではないはずである。
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