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「イノウエをPFPの“王”にしたい」「どちらも“1位”に」井上尚弥の順位をめぐって前代未聞の意見が…伝統ある米リング誌の会議で一体何が?
posted2023/08/05 11:04
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Naoki Fukuda
「井上を強力に支持するものがいるのなら、クロフォードと井上の両方をトップに据えても間違いではないのでは? パウンド・フォー・パウンド(PFP)でトップ5に入る2人が、同じ週に素晴らしい勝利を挙げるのは未知の領域だったのだから」
PFPランキングで、1位が2人……? 2019年秋以降、伝統ある『リングマガジン』のランキング選定委員を務めてきた筆者にとっても、ランキング会議でそんな大胆な意見を目にするのは初めてだった。
妙案を出したエイブラハム・ゴンサレス氏(アメリカ)の意図も理解できるところではある。7月25日、井上尚弥(大橋)が日本でスティーブン・フルトン(アメリカ)に圧倒的な8回TKO勝ちを飾れば、29日にはラスベガスでテレンス・クロフォード(アメリカ)がエロール・スペンス ・ジュニア(アメリカ)に9回TKO勝ち。井上、クロフォードという2人の達人は自己最高レベルのパフォーマンスで魅せてくれた。
この“伝説的な5日間”は語り継がれ、同時に勝者となった両雄の評価をさらに跳ね上げることにもなった。“最も権威がある”と称されるリング誌のPFPランキングでも、両者の順位に様々な意見が出るのは当然だったのだろう。
PFP1位は確定的と見られたが…
世界バンタム級の4団体統一を果たした井上が、スーパーバンタム級での初戦でみせた強さはあまりにも見事だった。同級最強と目されたフルトンをアウトボクシングという相手の土俵で上回り、サイズに対する不安を一蹴。最後はジャンピング左フックでのダウンという新たなハイライトシーンも生み出し、“現役最高級のフィニッシャー”という称号の確かさも証明してみせた。
フルトン戦前の時点で、井上はリング誌のPFPランキングでもオレクサンデル・ウシク (ウクライナ)に次ぐ2位だった。ここでキャリア最大の強敵とされたフルトンに文句のない勝ち方をした後で、“モンスターのPFP1位浮上は確定的”という空気が漂ったのは事実だった。
「私は井上こそがPFPのNo.1ボクサーと認められるべきだと思っています。現在、ウシクが1位ですが、フルトン戦での勝利で井上はウシクを上回った。スペンス、クロフォードのどちらかが井上のようにとてつもない勝ち方をした場合のみ、トップ浮上の可能性は出てくるのかもしれません」
同じくリング誌の選定委員であるトム・グレイ氏(英国)は井上対フルトン戦後にそう述べていたが、筆者もその意見にほぼ同意だった。