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「イノウエは殺し屋だな」あのメイウェザーの“叔父さん”が井上尚弥vsフルトンを絶賛…まさかの対決を予想「イノウエは“タンク”と試合したいんだろ?」
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph byNaoki Fukuda
posted2023/08/04 11:08
井上尚弥“衝撃の右ストレート”を浴びてよろめくフルトン
「そうか……。でも、もはやスーパーバンタムでイノウエと互角に渡り合える選手っていないんじゃないか。あのパンチ力はフェザー、もう一つ上のスーパーフェザーでだって十分通用すると俺は見る。イノウエを脅かす選手として、タンクの名前が挙がるっていうのは、それだけ評価が高いからだ。
アメリカのボクシング界、いや、世界中がイノウエのようなニュースターの出現を待っていた。ウチの甥っ子のレベルに到達可能な数少ない逸材だよ。今、彼は日本のスーパースターなんだろうが、世界を席巻出来るだろうな。イノウエの存在そのものが、俺にとっては感動的だよ」
「イノウエにはライバルが必要だ」
1997年の引退後、トレーナーを生業としているジェフに、井上尚弥が更に上に行くために必要なことは何かと質した。
「どの選手にも当て嵌まるが、ディフェンスの向上だ。フルトン戦はイノウエが圧勝したが、一発もパンチをもらっていないって訳じゃない。そんなことは難しいって思うだろう? でも、ファイターはそこを目指していくべきだ。防御テクニックを洗練させなければいけない。
もう一つ挙げたい。これまでのイノウエには、実力伯仲のライバルとの戦いが無いだろう。それは彼が図抜けているからだが、イノウエでも苦労する相手、潜在能力を引き出すような強敵との試合をやってもらいたい。ディフェンスの重要さが、より理解できるよ。また、対戦も注目される。イノウエは既に偉大過ぎるファイターではあるが、パッキャオみたいな知名度になれるんだよ」
22歳でボクシングの本場、アメリカ合衆国に進出したパッキャオは、常にその時点で最も話題になるスターと戦い続けた。そして、チューンナップ試合を挟まず、次から次へと大物と対戦し、彼らを踏み台にすることで、スターダムを駆け上がっていった。
「フルトンのレベルじゃ、イノウエの相手にはならないさ。噂とはいえ“タンク”との戦いが話題になるのも当然だ。イノウエは敵がいないから、ライバルがいないから、階級を上げてきたんだよな。リングでの一つ一つの動きも、チャレンジする姿勢も、俺の心を揺さぶるね」
フルトン戦後、井上尚弥自身が「自分のキャリアは最終章に差し掛かっている」と発言したことを伝えると、ジェフは話した。
「年齢など気にせずに、イノウエがやりたいようにやればいいと思う。あれだけリングを支配できる選手には滅多にお目にかかれない。誰だって、イノウエみたいなボクシングをやってみたいさ。でも、出来ないんだ。フルトンだってそうだ。
フロイド・メイウェザー・ジュニアがWBA/WBCウエルター級チャンピオンのまま、引退をアナウンスしたのは、彼が38歳の時。加齢とともにスタイルも変わったけれど、誰もが通る道だ。イノウエのボクシングIQなら、仮に自身の衰えを感じたとしても、それを補う戦い方が頭に浮かんでくるだろう」
井上尚弥は日本ボクシング界において、前人未踏の道を全速力で走っている。
「もっともっと、イノウエのファイトを見たいよ」
ジェフはしみじみと、そう結んだ。
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