ボクシングPRESSBACK NUMBER
「イノウエは殺し屋だな」あのメイウェザーの“叔父さん”が井上尚弥vsフルトンを絶賛…まさかの対決を予想「イノウエは“タンク”と試合したいんだろ?」
text by
林壮一Soichi Hayashi Sr.
photograph byNaoki Fukuda
posted2023/08/04 11:08
井上尚弥“衝撃の右ストレート”を浴びてよろめくフルトン
「イノウエは、素晴らしいファイターだな。過去にラスベガスでやったジェイソン・モロニー(2020年10月31日)戦、マイケル・ダスマリナス(2021年6月19日)戦の時も強いと感じたし、ノニト・ドネアとの第2戦だって、初戦の反省点を生かして早く仕留めたよな。成長が加速し、全ての面で磨きがかかっている。彼はキラー(殺し屋)だ。
正直、フルトン戦が決まった時から、イノウエとは差があり過ぎると思っていた。イノウエの爆発力は驚きだよ。今回は、ノックアウトに結び付けるための仕掛けを序盤からやっていって、どこで強打を見舞うか、というシナリオを描いたな。ファーストラウンドの途中で、俺はイノウエの勝利を確信した。ボディーにジャブ、顔面に右ストレートを打って、接近戦ではコンビネーション。実にボクシングIQの高い選手だ。フルトンには対応策が無かった。そりゃあそうだよ。モノが違うんだから。イノウエは、もっともっとデカい存在になるだろう。新しいマニー・パッキャオの出現って感じだな。アメリカでもスーパースターになれる男だ」
「頭が良い…フロイド・ジュニアもそうだった」
ジェフは、井上尚弥とフルトンではスピードも技術も雲泥の差だとしながら、一番の違いはパンチ力だと言った。
「KO率にも表れているだろう。イノウエは25勝してノックアウトが22。フルトンは21勝で8。しかも世界タイトル戦は全部判定だ。相手を倒せるタイプじゃない。フルトンは、何とかイノウエをポイントアウトしようとした。でも、リング上で自分が思い通りに動けるスペースが無くなっていった。ノーチャンスだったね。
イノウエは左のガードを下げてフリッカージャブで誘い、フルトンが出てくるなら、いつでもビッグパンチを打ち込んでやるぞ、と伏線を張った。いい選手って、色々トライして戦い方や知識を貯めていくんだよ。フロイド・ジュニアもそうだった。イノウエはずっと、KOのタイミングを窺っていたのさ。ガムシャラにパンチを出して相手が倒れるかって言えば、そんな事は無い。世界戦ともなれば、駆け引きが大事なんだ。イノウエはボディーへのジャブ、顔面への右ストレートを序盤から繰り返していた。同じパンチと言ったって、当てるタイミングは、それぞれ違うだろう。どこで強打を爆発させるかを計って、作戦通りに沈めたのさ。フリッカーじゃなく、固いガードからのジャブだって、出そうと思えば出せた。左のガードを下げることで、フルトンが右を放てるようにしていたのさ。そこでガードが空いたら、こっちが打つぞってさ。イノウエは、本当に頭の良い選手だ」
「イノウエは“タンク”とやりたいんだろう?」
会話の途中でジェフは、「イノウエってライト級に上げて“タンク”とやりたいんだろう?」と私に質問してきた。WBAライト級レギュラー王者の、タンクことジャーボンテイ・デービスも29戦全勝27KOの実力者だ。しかし、それは単なるファンの願望であって現実的ではない。135パウンド(61.2Kg)のライト級と、122パウンド(55.3Kg)では、クラスが異なると説くと、ジェフは言った。