千秋楽で豊昇龍に敗れ、悔しさをあらわに

　場所の終盤になり自身も優勝争いの渦中に身を置く中で、先頭を走る錦木、北勝富士を次々と撃破すると、千秋楽は優勝決定戦進出を懸けて関脇・豊昇龍と相対することになった。賜盃を抱けば109年ぶりの新入幕V、貴花田以来となる31年ぶりの10代優勝、前代未聞の“ザンバラV”など、歴史を大きく塗り替えることになる。

「ものすごく憧れている舞台で戦って、その中で優勝は自分の一つの夢だけど、ものすごく遠い存在です。自分は優勝するレベルにはいない」

　大一番でもやることは同じ。目の前の相手に勝つために準備して臨んだが、やはり番付の壁は高かった。取組後は悔しさをあらわにしたが、賜盃を逃したからではなかった。

「勝つために準備をして、勝てなかったことが悔しい。しっかり準備したけど、相手が強かったです」

名古屋場所千秋楽。豊昇龍の上手投げに屈し、悔しげな表情を浮かべる伯桜鵬　©JIJI PRESS

　大偉業は水泡と帰したが、自らが「憧れの舞台」と呼ぶ最高峰の土俵でいきなり11勝4敗、敢闘賞と技能賞をダブル受賞した。まだ10代の髷も結えない“新弟子”にもかかわらず、自分が準備してきたことを存分に発揮できるのは、やはり“怪物”以外の何者でもない。常に研鑽を怠らない努力の男はこの先、さらにスケールアップした“化け物”として土俵上を席巻しているはずだ。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。