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6歳の井上尚弥が叫んだ「約束する。俺は強くなりたいんだ!」軽自動車を素手で押し上げ坂道を…父・真吾さんが明かす“最強”の子育て〈原点秘話〉
posted2023/07/26 17:02
text by
谷口隆俊(スポーツ報知)Takatoshi Taniguchi
photograph by
Takuya Sugiyama
28歳と6歳の「男と男の約束」から『伝説』は始まった――。
プロボクシング世界4階級制覇王者の井上尚弥(大橋)は昨年、米国で最も権威のある専門誌が選定するパウンド・フォー・パウンド(全階級を通じての最強ランキング)で日本人初の1位となり、世界で初めてバンタム級で主要4団体の統一王座を獲得した。4本のベルトをすべてKOで手にした、世界唯一の男となった。そして、さらなる高みを目指し、スーパーバンタム級へ転級。今月25日、有明アリーナでWBC&WBO世界同級統一王者スティーブン・フルトン(米国)に挑戦し8回1分14秒でTKO勝利を収めた。
「約束する。俺は強くなりたいんだ」
20世紀最後の年、小学1年生の尚弥は父・真吾さんの姿を見て、グローブを手に取った。10代の時に空手で鍛えるなど格闘技好きだった真吾さんは当時、アマチュアボクシングに励んでいて、家の中には鉄アレイなどが転がっていた。父が部屋でトレーニングする姿を見て、尚弥はボクシングをやりたいと訴えた。真吾さんはこう振り返る。
「自分は真剣にボクシングをやっていたから、趣味の延長みたいな感じで教えるのは嫌だった。ボクシングはそんなに甘くないんだよ、殴り合いだし、ケガもするし、試合になれば減量もあるし……と。そうしたら、ナオは『約束する。俺は強くなりたいんだ』って。相手は子供でも、男と男。中途半端なら教える気はなかった。強くなりたいなら、親として100%、サポートしたかった」