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「ショウヘイが理想なんだ」メジャーMVP選手が大谷翔平について“異例の取材”に応じた理由とは? ジャッジが語る「彼なら100本塁打を打てる」
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph byJIJI PRESS
posted2023/07/24 11:00
好調を続ける大谷翔平。昨季MVPのアーロン・ジャッジが大谷について語った
「ショウヘイなら80本、100本、本塁打を打てる」
1961年、ヤンキースの偉大な先輩であるロジャー・マリスが61本塁打を放ち、ア・リーグ記録を打ち立てた。それ以前の記録保持者は1927年に60本塁打を放った同じくヤンキースのベーブ・ルースだ。聖地と呼ばれるヤンキースタジアムにはファンが本塁打に熱狂する歴史と伝統がある。だが、ジャッジは昨季戸惑ったという。
「(打席に入ると)スタジアムのみんなが立ち上がるけど、応援しなくなってしまったんだ。静寂が漂い、試合がいつもと全く違う雰囲気になってしまった。62本塁打に近づいた頃には安打を放っても喜んでもらえなくなったことはショックだった。(本拠地での)パイレーツ戦やレッドソックス戦で二塁打を打っても喜んでもらえなかった。彼らが歴史を見たいと思っていることはわかるが、自分に怒っているようにさえ感じた。我々は試合に勝つために戦っているのにあの状況はなかなか厳しかったね」
誰にでも経験できることではない。だが、その道を今年、大谷が辿るかもしれない。ジャッジはエールを送った。
「この経験から僕は野球というゲームを考えるようになった。自分にできることに集中するということだ。記録でなく自分の準備や仕事に集中する。そしてシーズンを全うする。ここまで来ると精神的なものでしかないんだ。フィジカル的にはショウヘイなら80本、100本、本塁打を打てるだろう。彼はそういう才能を持っている。だが、そういう瞬間に大事なことはメンタルなんだ。雑音をいかに遮断できるか。そこが重要なんだ」
異例? ジャッジが大谷について取材に応じた理由
ジャッジは右足親指の靭帯断裂で故障離脱中だ。負傷者リスト入りしている選手が自身以外のことで取材に応じることは少ない。何故、ジャッジは大谷について話すことを受け入れたのか。それは共有する価値観にあった。
「彼はチームが勝利するためにできることは何でもする。僕も同じ考え方を持っている。僕がここで話すのは彼が同じ考えを持っているからだ。大事なことは最高の選手であることを見極め、自分たちがどこにいるのかを確認することだと思っている。去年も彼とはいろいろ楽しいことがあったよ」
楽しいこと――。それはヤンキースタジアムでのことだろう。ジャッジが大谷の本塁打をジャンピングキャッチしたかと思えば、大谷がジャッジの頭上を越えていく本塁打を放った。ジャッジはファン目線で大谷の凄みを話した。
「彼の打撃を見るのが好きなんだ。マウンドでしていることも洗練されている。5、6種類の球種を投げるしね。でも、毎晩のように500フィート(約152.4メートル)の打球を右翼へ放ち、インサイドのボールは左中間に運ぶ。得点圏に走者がいれば2ストライクからでも彼はボールをインプレーに運ぶことができる。あの体格でリーグトップの三塁打を放っていることは驚きだ」