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「井上尚弥の圧力にフルトンが萎縮するようなら…」“パンチを予見するカメラマン”が歴史的な無敗対決を展望「中盤に試合が決まる可能性も」 

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福田直樹

福田直樹Naoki Fukuda

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photograph byNaoki Fukuda

posted2023/07/23 17:03

「井上尚弥の圧力にフルトンが萎縮するようなら…」“パンチを予見するカメラマン”が歴史的な無敗対決を展望「中盤に試合が決まる可能性も」<Number Web> photograph by Naoki Fukuda

7月15日、公開練習のフォトセッションで笑顔を浮かべる井上尚弥。ボクシングカメラマンの福田直樹氏に、歴史的な一戦を展望してもらった

井上尚弥に“階級の壁”はあるのか

 しかし、その一方で攻防のところどころに少し”ゆるい”部分があるのも確かである。直近の試合となる2022年6月のダニエル・ローマン戦ではリーチを活かしてシャープなアウトボクシングを貫いた。だが本来の戦いぶりには、相手の攻撃を徹底してかわし抜けるほどの集中力は感じられない。体のどこかに時折いいパンチを被弾しながら、その都度立て直してリードをキープしていく印象だ。たった一度のミスも許されない、急所を外れた場所も守り続けなければならない井上との対戦で、最後まで致命打を避けるのは難しいのではなかろうか。フルトンも井上のボクシングを散々研究してきたと話しているので決して侮れないが、それでも防ぎきれないものはある。

 都合のいい見立てかもしれないが、対する井上はバンタム級での強さをほぼ保っていると考えている。マニー・パッキャオの例を出すまでもなく、増量のためのトレーニングメソッドが発達した近年では、今回のような段階を踏んだ階級アップで“クラスの壁”にぶち当たるケースが少なくなった。井上陣営もスピード維持、パワーアップの両立を目指して体を作ってきたはずだ。万が一、転級によって決定力が多少目減りしていたとしても、バンタム級時代のままで十分通じるだけのパンチ力を備えている。

 フルトンは素晴らしい試合巧者だが、井上はそれ以上に特別なファイターだ。一歩引いてニュートラルな目線で考え直しても、結局は井上に分があると思えてしまう。切り込んでいくスピードや精度、バランス、ステップワークの滑らかさでも、もともと王者を上回っている。

 試合展開をイメージすると、やはりフルトンが広めのスタンスとフットワーク、左リードで慎重に距離をとり、井上がリング中央からプレッシャーをかけるスタートになるのではないか。

 フルトンがサイドに動くことによって、両者のポジションや角度が絶えず変わるため、カメラマンとしてもそれをファインダー越しに追うのに苦労するかもしれない。似たような「万能パンチャー対ボクサー型」の組み合わせ、例えば2016年のカネロ・アルバレス対アミール・カーン(カネロの6ラウンドKO勝ち)などを撮った時の記憶を辿って、なんとなく当日のレンズワークをシミュレートしている。

【次ページ】 もし立ち上がりでフルトンが萎縮するようなら…

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井上尚弥
スティーブン・フルトン
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