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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
バンタム級の井上尚弥は「強すぎた」? 長谷川穂積が語るフルトン戦の見どころ「クリンチが増えると苦しくなる」「耐久力という点では…」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2023/07/25 11:03
7月24日、計量後のフェイスオフでにらみ合うスティーブン・フルトンと井上尚弥。井上は身長・体格に優るフルトンを攻略できるのか
「普通に考えればバンタム級よりタフ」
「クール・ボーイ」のニックネームを持つフルトンが序盤、懐の深さをいかし、しっかり距離をキープしてジャブでポイントを獲得するようだと怖い。フルトンの思い描くモンスター攻略のシナリオは俄然、現実味を帯びてくる。
「フルトンはポイントでリードすると、近くで打ってくっつく、クリンチをよく使ってきます。そこで井上選手がフルトンの体の強さを感じる可能性がある。バンタム級だとスッと振りほどけていたクリンチが、スーパーバンタム級ではほどけなくなる。井上選手はこれまで執拗にクリンチされたことがほとんどない。だから経験したことのない戦いになる。クリンチの場面が増えるようだと、井上選手も苦しくなるでしょう」
井上がジャブの差し合いで後手に回る、あるいはクリンチ地獄にはめられる。いずれも可能性の話であり、長谷川さんは「そうなる前に終わる可能性のほうが高い」と見ているが、なにしろ井上はスーパーバンタム級初戦なのだ。未知の世界に何が待っているのかは、だれも分からない。
「井上選手はスパーリングでフェザー級の世界ランカーなんかともバリバリやっています。そう考えると1階級上げるくらいはどうということはない。フルトンはフェザー級に上げようかというくらいの体格ですけど、それでも問題はないと思う。ただ、耐久力という点では、スーパーバンタム級の選手は普通に考えればバンタム級の選手よりも強い。そこがどうなるかですね」
長谷川さんは「バンタム級の井上選手はあまりにも強すぎた」と表現した。バンタム級の選手はだれもが井上の攻撃力に為す術がなかった。では、スーパーバンタム級の選手ならどうか。もし井上の攻撃にある程度耐えることができるなら、状況は変わってくる。