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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
バンタム級の井上尚弥は「強すぎた」? 長谷川穂積が語るフルトン戦の見どころ「クリンチが増えると苦しくなる」「耐久力という点では…」
posted2023/07/25 11:03
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
前バンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)がWBC・WBO世界スーパーバンタム級王者のスティーブン・フルトン(米)に挑む世界タイトルマッチが7月25日、有明アリーナで行われる。井上の有利が伝えられる中、階級アップ初戦のモンスターに死角はないのだろうか。元3階級制覇王者の長谷川穂積さんに注目の一戦を展望してもらった。(全2回の2回目/前編へ)
ジャブの差し合いがフルトン戦のポイントに
階級アップはバンタム級で減量が限界に近づいていた井上に有利に働く。そう考える長谷川さんは、フルトンのスタイルにも注目する。
「フルトンは大きく分けると井上選手と同じようなタイプだと思います。ジャブがうまくてしっかりした技術を持っている。脚も使えるし、近い距離でもそこそこ戦える。では、似たもの同士の戦いで、どうやって差がついていくかというと、キャリア、パワー、引き出しの多さ、攻撃面でいうとジャブの的中率が挙げられます。こうした要素が効いてきて、ちょっとずつ差がついていくと思います」
話が少し横道にそれるが、長谷川さんがフルトンと対極の選手として挙げたのが、フルトンとのスーパーバンタム級2団体統一戦に敗れたブランドン・フィゲロア(米)だ。体が大きく、スイッチしながら体で押してくるファイターで、「ああいうフィジカルでガンガンくるタイプと井上選手がやったら面白い」と長谷川さんは語った。フィゲロアはフルトン戦後に階級を上げ、現在はWBCフェザー級暫定王座に就いている。
話を戻そう。ジャブの的中率で差がついていくということは、フルトンが序盤のジャブの差し合いで上回れば、モンスター相手に有利に立てることを意味する。
「この試合の見どころは、1、2、3ラウンドのジャブの差し合いだと思います。ジャブの名手である井上選手が差し負けるとは思わないですけど、フルトンもジャブがうまい。ジャブの差し合いのタイミング、スピードで仮に井上選手が負けるようだと、厳しい試合になるでしょう」