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井上尚弥に“階級の壁”はあるのか? バンタム→フェザーで世界を制した長谷川穂積に聞く“壁を感じた瞬間”「あれ、効いてないのかな、と…」

posted2023/07/25 11:02

 
井上尚弥に“階級の壁”はあるのか? バンタム→フェザーで世界を制した長谷川穂積に聞く“壁を感じた瞬間”「あれ、効いてないのかな、と…」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

現役時代の長谷川穂積さん(2012年撮影)。バンタム~フェザー級の3階級で世界を制した名王者は、井上尚弥の階級アップをどう見ているのか

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Nanae Suzuki

 前バンタム級4団体統一王者の井上尚弥(大橋)がWBC・WBO世界スーパーバンタム級王者のスティーブン・フルトン(米)に挑む世界タイトルマッチが7月25日、有明アリーナで行われる。はたして井上はスーパーバンタム級に上げても“モンスター”と称される強さを発揮することができるのか。自らも階級アップを経験した元3階級制覇王者・長谷川穂積さんに、“階級の壁”を中心に試合の展望を聞いた。(全2回の1回目/後編へ)

長谷川穂積が語る「階級アップのメリット」

 長谷川さんは2005年4月、名王者のウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)を下してWBCバンタム級王座を奪取、10度の防衛を成功させた。2010年4月、WBO王者のフェルナンド・モンティエル(メキシコ)に敗れて王座陥落したあと、一気に2階級上げて同年11月にフアン・カルロス・ブルゴス(メキシコ)に勝利。WBCフェザー級王座に就いた。

 1999年のデビューから10年以上にわたってバンタム級で戦った長谷川さんにとって、階級アップはまず「減量苦から解放される」という意味が大きかった。

「バンタム級時代は3週間くらい前から本格的に体重を落としますけど、フェザー級に上げたときは10日くらい前まで普通にご飯を食べることができました。これは大きい。減量が厳しくなると、ここまでくると急に落ちなくなるというラインがあるんです。僕の場合は55kg(バンタム級のリミットは53.5kg)。そこまではトントン拍子で落ちるのに、55kgまでいくと落ちなくなる。体が『これ以上落としたら危険ですよ』と信号を出すんでしょう。フェザー級のリミットは57.1kgです。これは余裕でしたね」

 体重が落ちなくなると、トレーニングに大きなマイナスが出るという。

「減量が厳しくなると、技術を磨いたり、相手の対策をしたり、というトレーニングができなくなります。たとえばスパーリングをしても“やってるだけ”になる。もちろん試合で勝つために練習しているんですけど、どうしてもただ汗を掻くためだけ、減量のためだけの練習になる。これが大きなストレスになります。減量が楽になれば2週間前、10日前まで中身の濃い練習ができる。階級アップのメリットはここが一番大きい。練習に集中もできます」

【次ページ】 「あれ、効いてない…」“階級の壁”を感じた瞬間

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