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井上尚弥に“階級の壁”はあるのか? バンタム→フェザーで世界を制した長谷川穂積に聞く“壁を感じた瞬間”「あれ、効いてないのかな、と…」
posted2023/07/25 11:02
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Nanae Suzuki
長谷川穂積が語る「階級アップのメリット」
長谷川さんは2005年4月、名王者のウィラポン・ナコンルアンプロモーション(タイ)を下してWBCバンタム級王座を奪取、10度の防衛を成功させた。2010年4月、WBO王者のフェルナンド・モンティエル(メキシコ)に敗れて王座陥落したあと、一気に2階級上げて同年11月にフアン・カルロス・ブルゴス(メキシコ)に勝利。WBCフェザー級王座に就いた。
1999年のデビューから10年以上にわたってバンタム級で戦った長谷川さんにとって、階級アップはまず「減量苦から解放される」という意味が大きかった。
「バンタム級時代は3週間くらい前から本格的に体重を落としますけど、フェザー級に上げたときは10日くらい前まで普通にご飯を食べることができました。これは大きい。減量が厳しくなると、ここまでくると急に落ちなくなるというラインがあるんです。僕の場合は55kg(バンタム級のリミットは53.5kg)。そこまではトントン拍子で落ちるのに、55kgまでいくと落ちなくなる。体が『これ以上落としたら危険ですよ』と信号を出すんでしょう。フェザー級のリミットは57.1kgです。これは余裕でしたね」
体重が落ちなくなると、トレーニングに大きなマイナスが出るという。
「減量が厳しくなると、技術を磨いたり、相手の対策をしたり、というトレーニングができなくなります。たとえばスパーリングをしても“やってるだけ”になる。もちろん試合で勝つために練習しているんですけど、どうしてもただ汗を掻くためだけ、減量のためだけの練習になる。これが大きなストレスになります。減量が楽になれば2週間前、10日前まで中身の濃い練習ができる。階級アップのメリットはここが一番大きい。練習に集中もできます」