Number ExBACK NUMBER
「日本の国技でアメリカの国技に挑戦したい」大学1年でアマ横綱に…相撲界“無敵の21歳”が「実戦未経験」でも本場の名門大へ編入できたワケ<アメフト転向表明>
text by
一野洋Hiroshi Ichino
photograph byJIJI PRESS/Xリーグ
posted2023/07/21 17:05
体一貫の大相撲から防具をつけたアメフトの世界へ。アメリカNCAA1部の大学への編入を決めたアマチュア横綱の花田秀虎
NFLへの最初の壁は「NCAA1部校でプレーすること」
コロラド州立大が属するNCAA1部は、10のカンファレンスとそこに属さず独立している「インディペンデント(7校)」に分けられ、全部で131校が所属している。歴史や地域性に基づいて構成されたカンファレンスは、伝統があり強豪校が集まる「パワー5(64校)」と、それ以外の「グループオブ5(60校)」に分類される。
花田の進むコロラド州立大は、NFL選手を多数輩出する「パワー5」より実力的に少し劣る「グループオブ5」の一つだが、試合の出場機会を優先する花田にとっては良い環境なのかもしれない。そして、花田が目指すNFLの選手は、この全米から選りすぐりのエリートが集まったNCAA1部校の中からドラフトされるのがほとんどだ。
極端な話、NCAA1部校でプレーしていなければNFLのドラフト指名のチャンスは無いと言っていい。その最初のハードルを越えることができたことになる。
もともと花田は、父が大学時代にレスリングで全国優勝経験を持ち、母は柔道指導者という両親の影響から、幼い頃から柔道やレスリングなど、さまざまな格闘技に身近に接していた。なかでも最も打ち込んでいた相撲では、小学校2年で地元・和歌山のわんぱく相撲大会で優勝。
順調に成長を重ねると、和歌山商業高校時代の2018年と2019年には世界ジュニア選手権個人無差別級を連覇。さらに、2022年のワールドゲームズでも相撲の重量級で1位に輝くなど、アマチュア相撲界では敵なしだった。
一方で、最初に映像を見た中学時代からアメフトーーというよりも、NFLへの興味を抱き続けていたという。自身のキャリアを考えた時、年齢的なことも考え昨年思い切って競技転向を決めた。
相撲道を15年近く邁進してきた花田だからこそ、最初は相撲とアメフトの違いに戸惑った部分もあった。
「相撲では裸足でずっとやっていたので、スパイクを履いて走ることに慣れていなくて。やっとスパイク慣れして靴擦れも痛くなくなってきました。あとは目の使い方。相撲は1対1で相手一人だけを見るけれど、アメフトは色々なところを見ないといけない。たくさんのリアクションをしないといけないというところでは、視野が広がったと思います」